皆さん、こんにちは。梅津奏です。

私には、年の近い兄と弟がいます。仲良しです。だんご三兄弟のように顔が似ていて、誰が見ても兄弟だとわかるみたいです。

コロナ禍前はたまに飲みに行ったり。兄が東京出張のときは抜かりなく捕獲し新橋の餃子屋に連行していました。

兄だけが理系で、弟は運動神経が良くて、私が一番偏屈で。
違いは正直それくらい。大人になって周りを見渡した時、我らが三兄弟ほど均質に仕上がった例は割と珍しいんだなということに気付きました。

兄弟姉妹って、たぶん遺伝子的には世界で一番近しい人間なんでしょうね。顔や体格、頭の良さや趣味嗜好も似ていたり似ていなかったり、仲が良かったり険悪だったり。よその人の兄弟姉妹の話を聞くのが結構好きです。

今日はリアルの自分に引き寄せて、兄×妹、姉×弟の物語を選んでみました。


「僕の姉ちゃん」益田ミリ

 

「すーちゃん」シリーズでお馴染み、益田ミリさんのエッセイ漫画です。

両親が海外赴任することになり、期間限定で二人暮らしすることになったOLの「姉ちゃん」とサラリーマンの「僕」。夜仕事から帰ってきたら、ビールやお茶を飲みながらダラダラお喋りするのが日課です。外では色々取り繕っているらしい策士の姉ちゃんが、甘ちゃんな弟に遠慮斟酌なく突っ込みをいれまくるのが痛快。


「アンタってどこまでも月並みだわねえ」
「我が弟は素直にすくすく育ったものよのぅ~」
「このままおとぎの国で生きてて欲しいヨ」
「やめてくれないかな その、一反もめんみたいにぺっらぺらの思考」
「アンタの口からはミジンコほどの意外性も出てこないね」
「アンタって 一本調子な男だわねえ」


あれ?私、益田さんに取材協力したっけ?、と錯覚してしまうほどリアルな姉弟の会話。私が世界で一番遠慮なく思ったことを言える相手は、間違いなく弟です。


「あたし、しみじみ思うんだけどさ 自分の弟が平凡でよかったよ 平凡中の平凡で」


時にクレイジーな姉ちゃんに引き気味の弟。いいんだよ、君はそのままでいてくれ。

 

なんで弟ってやつは、つまんないことしか言わないんですかね?いい子なんですけどね。


 

「流しのしたの骨」江國香織

 

実生活では、しっかり者の妹さんがいる江國香織さん。とても仲がよさそうで、妹さんとのあれこれはエッセイにもよく出てきますよね。お二人の会話やおでかけの様子はなんだかおとぎ話っぽくて、姉妹のいない私は憧れます。

姉妹キャラクターが多い江國さんの小説。本書は、弟が登場する珍しい物語です。

おっとりした長姉の「そよちゃん」、ちょっと変わり者の次姉「しま子ちゃん」、主人公の「こと子」、そして弟の「律」。ちょっと現実離れした浮遊感のある女性キャラクターたちは、弟をどんな風に扱うのでしょうか…?


私たちの小さな律は、今年十五歳になる。だからもうたいして小さくはないのだが、私はどうしても、律のことを小さな弟と呼んでしまう。弟、と、小さな、は律にくっついているのだ。小川軒のレーズンウィッチの、二枚のビスケットとバタークリームのように。


なるほど。お姉ちゃんたちにとっての弟は、いつまでも「小さい弟」なんですね。確かになあ…。すぐお腹を壊し、意味不明なタイミングで鼻血を出してびーびー泣いていた可愛いあの子はどこに行っちゃったのか。お姉ちゃんは寂しい。


「恋文の技術」森見登美彦

 

京都の怪人、森見登美彦さん(奈良在住)。森見さんの小説は、ファンタジー小説と呼ばれることも多いのかな。私はSFに関してはアマチュアですが、森見さんの描くファンタジー世界はもっと身近な感じ。だからこそ逆に夢があって、私は好きです。

本作は、森見さんお得意の「京都の腐れ大学生」ものの一つ。正確には、京都の大学院から遠く離れた能登半島の研究所に派遣された「守田一郎」が主人公。研究が思うように進まず、遊び相手もいない一郎君。彼は寂しさのあまり、京都に住む友人・知人・家族に手紙を送りまくります。


京都の暮らしがなつかしい。荷造りしながら、「俺という大黒柱を失う京都が心配だ」と嘆いていたら、「その前に自分の将来を心配しろ」と妹に言われた。女子高生のくせに。しばしば本質をつくのが彼女の悪いところだ。あれでは幸せになれんよ。


森見さんには、妹さんと弟さんがいるようです。エッセイなどから推測するに、兄弟構成は我が家と同じ。割と仲良しなところも同じ。兄のことをよく観察していて、無邪気という名の真剣を刺し込んでくる妹の描写とか、「有頂天家族」に出てくる狸の三兄弟のキャラクター設定とか、私のツボにはまりまくるのはそういう背景もあるのかも。

 

こんな感じでしょうか。
私が選んだので当然なのですが、どれにも共感しかありません。

兄弟姉妹の描写がクールだったりシリアスに迫ったりする小説を書く人は、エッセイなどを読んでもリアルな兄弟姉妹についての記載が殆ど出てこなかったり。そういうのってどちらがいいとか悪いというものではありませんが、作品に出るのかもしれないですね。

 

内田樹さんが「街場の親子論」の中で、「僕と平川君は基本的に「それぞれたいせつなものはパブリックドメインに置いて共有する」ということをルールにしています。」と書いていました。平川君とは、内田さんの小学生時代からの友人で実業家・文筆家の平川克美さん。実際にドメインを設定する訳ではなく、「お互い、読んだ本とか思いついたことは教え合って共有財産にしようぜ~!」って感じ。これ、親密に育った兄弟でも似たようなことがあるなと思いました。(パブリックじゃなくて)共有クラウドに記憶を蓄積しておくみたいなイメージ。
益田ミリさん作品は、疲れている日なんかに読みたくなる、お茶で言ったら焙じ茶みたいな存在。現実逃避していないのに、ほっこり温かいんですよね。写真は神保町の東京堂書店のミリさんコーナー。(お店の方にお声がけして撮影しました)