皆さん、こんにちは。梅津奏です。

入学・卒業、入社・人事異動。
春は色々な人生の節目を迎える季節なので、気持ちがそわそわします。

書いてみて気付きましたが、上に挙げたどの転機も「組織から組織へ渡り歩く」ものですね。イメージされるのは、石から石にジャンプしながら川を渡る人の姿。

「次の石はどれにしよう」
「足が届く範囲で一番お得なのはどの石かな」

川の飛び石をヒヤヒヤしながら渡る人生、緊張感があって嫌いじゃないです。きっとこのまま、そうやって生きていくと思います。


さて今日は、そんな飛び石人生から離脱して、一人で泳ぎ始めた人々の本を紹介します。自分に同じことができるかは置いておいて、読むとなんだか深呼吸したような気持ちになれますよ。


「れんげ荘」群ようこ

 

小説「かもめ食堂」でお馴染みの群ようこさん。エッセイも小説も、すごく現実的なところとすごく非現実的なところのバランスが面白いなといつも思います。そして、ふわーっと無駄な力が抜けていくような読後感が心地いい。

本作は、「れんげ荘」シリーズ第一冊目。(現在五冊目まで刊行済)大手広告代理店に勤務するバリキャリのキョウコさん。とあることをきっかけに四十五歳で早期退職し、おんぼろアパート「れんげ荘」で無職・生活費月十万円ライフをスタートします。


何かをやり終えるごとに、することがなくなるのでキョウコは思わず笑ってしまった。会社に勤めているときは、あれだけやってもやっても終わらない仕事に追いまくられていたのに、今はひとつ事が終わると、次にすることを思いつくまで、ぼーっとしているしかない。


これは、いわばアラフィフ版「凪のお暇」。あの漫画とTVドラマが好きだった方、機会があれば是非読んでみてください。私は、キョウコさんと姪のレイナちゃんの関係が好きです。


「魂の退社-会社を辞めるということ」稲垣えみ子

 

五十歳で朝日新聞社を依願退職し、フリージャーナリストになった稲垣えみ子さん。電気を極力使わない生活を送っていることで有名で、トレードマークはアフロヘア。


私にとっては、このまま何の役にも立てないのにずるずると会社にいる時間の方が、残り限られた自分の人生にとって「もったいない」と思ったから辞めるわけで……。


本書は、人に「もったいない」と言われながら朝日新聞社を退社した経緯を綴った一冊。会社員生活について書かれた前半部分を読んでいて、何度心拍数が上がり胸の辺りを手で押さえたことでしょう…。(「死のトライアングル」とか「いつまでもつのか金満ライフ」とか)


人は案外と鋭敏なセンサーを持ち、そして電波を発している。(中略)人は自然に、同期できる相手をいつも探している。ただし集団の中にいるとそのセンサーはにぶくなり、電波も弱ってくる。だから会社員は人とつながるのが下手なんだな。

「つながり」がこれからの社会のキーワードだと言う人がいるし、私もそう思うけど、つながるためにはまず一人になることが必要なんだ。みんな知ってた?私は初めて知ったよ


私も去年初めて実感しました、そのことを。
コロナ禍になって自分が「疑似孤独状態」になったときに初めて、人とつながる能力が発揮された気がします。

 

稲垣さんが転機を迎える舞台として香川県が出てきます。親戚が住んでいるので、とても親しみのある土地。写真は、何年か前に直島を旅行したときのもの。若い!茶髪!半年間くらい謎にチャラかった時期ですね…。


「独立国家のつくりかた」坂口恭平

 

1978年生まれ、熊本県在住の坂口恭平さん。早稲田大学で建築を学び、卒業後は著名な建築家のもとで一年間の修業した後、…今に至る。

「今に至る」って、経歴の説明になっていないですね。坂口さんの職業、なんなんだろう。建築家?写真家?作家?はたまた、「独立国家の総理大臣」?

 

国家の条件は、1、国民。2、政府。3、領土。4、外交のできる能力。1と2はある。3は先述した銀座に見つけた所有者不明の土地を領土にしている。4、これは熊本県と実践中。


なぜお金が必要なのか、土地は誰のものか、日本に路上生活者がいるのはなぜか…。この本には、子供の頃から抱いていた数々の疑問に彼がどう向き合ってきたか、その向き合い方として「独立国家」をつくった経緯が綴られています。


僕は独立国家をつくったのだ。自分の人生をただ自分の手でどこにも属さずつくりあげている。僕はそういう人間だ。なぜ、そんな人生になってしまったのか。それには理由がある。それは、僕が幼い頃から抱えている質問に、誰も答えてくれないからだ。だから独立国家をつくり、自分でそれをひたすら考えている。

疑問を手放さず、考え続ける為に一人になる。物理的に独立することで、思考の自立を促す、ということなのかな。

 

こんな感じでしょうか。「え、あなた会社辞めたいの?」と思ったあなた、いやいやまさか!自分と違う人生を追体験したり、そういう人生からの学びを知ることができるのが、読書の醍醐味だと私は思います。

 

「独立国家のつくりかた」は講談社現代新書。編集担当をされていた講談社の川治豊成さんは、昨年〔ミモレ編集室〕編集・ライティング講座に講師としてご登場!書籍編集の裏話(どうやってネタ探しをするかとか、著者との関係の築き方とか)、とっても面白かったです。
ミモレブロガー小黒悠さんに教えてもらい、下北沢の本屋B&Bに行ってきました。たんまり購入し、ご満悦の私。