皆さん、こんにちは。梅津奏です。

生れてこの方、「おっとりしている」「のんびり屋さん」と言われたことがありません。
せっかちで、たいていのことはテキパキ終わらせてしまうタイプ。

夏休みの宿題は七月中に終わらせていたし、最初に内定出してくれた会社に就職したし、PCは電源ボタン長押しで消すし、カップラーメンは二分弱で食べ始めるし、レストランやカフェでは一瞬でオーダーを決めます。

そうやって捻出した時間で本を読むので、私にとって「せっかち力」は大事なのですが、たまに息切れすることも。呼吸が浅くなり、頭の中のざわざわが収まらず……。以前は定期的にエンストを起こしていましたが、最近は少し賢くなり、自分でタイミングをはかってブレーキをかけられるようになってきました。

ということで本日は、私御用達の「ブレーキ本」をご紹介します。


「A子さんの恋人」近藤聡乃

近藤さんの絵は、とにかく「線が生きている!」という感じ。

本書の主人公は、アメリカ留学帰りの英子(A子)さん。29歳の漫画家で、個性的な学生の多い美大に通っていた頃から「なんかあの地味な子」と評されていたような女性です。

優柔不断で、我の強い友人たちにいつも振り回されていて、要領の悪いA子さん。大学時代から腐れ縁のA太郎とも別れきれず、留学先で出会ったA君のプロポーズにもこたえられず、もだもだ懊悩するA子さん。

キャラクター設定だけ見るといかにも私は共感できなそうな女性なのですが、A子さんは何かが違う。むしろ、彼女の優柔不断さに感じ入ってしまうのです。


「早く次にいきなよ」
「まあ そうなんだけど
どうしても捨てられないんだよね……
ぎりぎりまで粘らないと諦められない」
「……〆切りがなかったら 一生悩むタイプだろ」
「うん……」


漫画のネームがまとまらず悶絶するA子に「思い切って全部捨てて書き直すべき」とずばりアドバイスするベテラン翻訳家のA君。割り切れないA子。

「とりあえず」や「便宜的に」みたいな、「人生早送りスイッチ」を安易に使わない。
自分が納得するまで決断しない。言葉にしない。
声の大きな人に、安直に耳を貸さない、説得されない。

そんなA子さんに、私は強さを感じます。
さういふものに、わたしはなりたい。(なれない)

 

エッセイ漫画、「ニューヨークで考え中」も大好き。NY在住の近藤さんのマイペースライフが丁寧に描かれています。セリフや地の文が写植ではなく近藤さんの手書き文字なのもいいです♪亜紀書房のウェブマガジン「あき地」で連載中。

 


「日日是好日」森下典子

 

樹木希林さん、黒木華さんが主演し映画化もされましたね。映画版も大好きで、BGMとして作業中によく流しています。

ライター・エッセイストの森下さんが、大学時代から二十五年間続けてきたお茶のお稽古について綴ったエッセイ。進路に悩む大学時代、恋愛での挫折、家族のこと。葛藤し、試行錯誤を繰り返す森下さんに、「お茶の世界」と武田先生の言葉がそっと寄り添います。


「あなた、今どこか、よそへ行っちゃってるでしょ」
「?」
私には、先生の言っている意味がわからない。
「若いってことは、だめねえ。全然落ち着かない」
先生は、独り言のようにつぶやいた、
「ちゃんと、ここにいなさい」


将来への不安、他人と自分を比べる焦り、やってしまったことへの後悔。あっちにもこっちにも気持ちが飛んでいき、千々に乱れる心。週に一度、お稽古に通ううちに、どんな天気も、どんな心も、その日をそのまま味わうということを少しずつ理解していく森下さん。


「雨の日は、雨を聴きなさい。心も体も、ここにいなさい。あなたの五感を使って、今を一心に味わいなさい。そうすればわかるはずだ。自由になる道は、いつでも今ここにある」


「デッドエンドの思い出」よしもとばなな

 

人生につまずいた登場人物が休暇をとったり、旅に出たりする小説を、「一時停止小説」と(勝手に)呼んでいます。私が特に惹かれるのは、「傷と共存する一時停止」の物語。恋人と別れたからインドに行こう!そして運命的な恋に落ちる!みたいな展開も楽しいけれど、一人でうずくまる主人公にシンパシーを感じる。

本書は短篇集。表題作「デッドエンドの思い出」はまさに私の好きなタイプの物語です。

主人公のミミは25歳、優しい家族と暮らす、おっとりのんびりした女の子。遠距離恋愛中の婚約者に不意打ちで会いに行ったところ、彼の部屋で新しい彼女と鉢合わせしてしまって……。


心のどこかでは家に帰りたかった。いつもの生活に戻って、もう全てを忘れてしまいたかった。(中略)でも、今すぐに家に帰ったら、なんだか微妙なところで決定的に自分がこわれてしまうような気がした。

ひとりになることができなければ、いつまでも傷は生のままだ。高梨君とつきあってきたのは私だけで、この傷は私だけのものだ。それをちょっとの間だけでも、大切にしたかった。


「傷を大切にしたかった」という言葉に、胸を突かれました。うっかり転んでしまったとき、何かにぶつかったとき、誰かに泣きついたり傷口を消毒したりすらしたくないと思うこと、ありませんか?


こんな感じでしょうか。

何かに追いかけられるように忙しなくしていると、眉間や口元に力が入り言葉にとげが出てくるのが自分でもわかります。つんのめる自分に適度にブレーキをかけて、安全運転で日々を過ごしていきたいな。皆さんのブレーキは、なんですか?

 

友人まりちゃんと合同お誕生日会を開催。

 

久々に山登りへ!天気が心配でしたが、思いがけない良い天気に恵まれました。体力がない私は登っている間ずっと余裕がないので、思考が一時停止状態です(笑)