今ならわかる、この時点で陽性確定ということが……


病院には小さな子どもも来ていて、とにかく他の人のほうへ顔を向けないようにしていました。五輪目前にしてコロナがまた増えてきている! と前日の情報番組で声高に注意喚起を訴えていましたが、それでも各都道府県ごとの罹患率をみると東京は人口10万人に対して26人という割合(参照:東京都足立区公式サイト)。宝くじ的な確率だなーと正直思ったのだけれど、でもこの時の私は自分はコロナに罹っているに違いない、と半ば諦めの境地に達していました。

 

「餡蜜さーん、どうぞお入りください」。中の人たちはこのコロナっぽい招かれざる患者を通す前にどんな準備をし、どんな心境なのだろう。防護服とか急ぎ着用したのだろうか……ドギマギしながら入室すると福々顔の先生がいつも通りの笑顔で迎えてくれました。

耳鼻科なのでまずは鼻と喉の様子を診てもらいます。「確かに鼻も喉も炎症はないですね。コロナとインフルエンザの検査をしてみましょうか」とのことで鼻の奥に細い綿棒をグリグリグリとやられました。「15分ほどで結果が出ますからね。あちらでお待ちくださいね」とカーテンで仕切られた隔離スペースに通されます。重苦しい15分でした。10万分の26人になっちゃうの私? でもそんな確率のものに当たるもんかな……と微熱でボーッとする頭で考えていました。

しばらくするとナースがパルスオキシメーターで血中酸素濃度を計測しに来ました。指にパチンとはさむアレです。今ならわかる、この時点で陽性確定ということが……。コロナというやつはこの血中酸素濃度が結構大事らしく、入院中も自宅療養期間も保健所からあてがわれた機械で毎朝晩せっせと計測を行っていました。

他の患者さんの診察に一区切りついた頃、福々先生が登場し、ことなげに「餡蜜さん、陽性ですね」と判決を下しました。「!!! おお……宝くじ当たっちゃったか……」。すぐに保健所に連絡をするので追って担当者から電話が来るから追々の対応についてはそこで話し合って欲しいということ、解熱剤と授乳中でも大丈夫な漢方薬を出しておくのでコロナ患者に対応している○○薬局へ向ってほしいということをおっしゃられ「お大事にね」といつものように微笑んで先生は立ち去りました。

なんか慣れてるなーと思わず感心してしまいました。我が街も結構罹患者がいるのかもなーなんて、まだ自分ごと化出来ずにいると受付のお姉さんがマスクの上からフェイスシールドをしてお会計にやってきました。お金はジップロックに入れてお渡しするスタイル、本人の気持ちとは裏腹に既に私の隔離はスタートしたのでした。