閉塞感を覚える日本の経済成長。一方で、アメリカなど、世界に目を向ければ大きな成長を遂げている企業がたくさん出ています。その差は、いったいどこにあるのでしょうか。
「ひふみ」シリーズを運用している資産運用会社の代表取締役会長兼社長である藤野さんに、マネーコラムニストの西山美紀と編集部員の片岡が話を伺いました。
<今回お話を伺ったのは……>
藤野英人さん
レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役会長兼社長
国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークス創業。「ひふみ」シリーズ最高投資責任者(CIO)。投資啓発活動にも注力し、JPXアカデミーフェロー、東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、叡啓大学客員教授を務める。一般社団法人投資信託協会理事。
――世界的に経済が成長している一方、日本が遅れを取っていることに不安を感じている人もいます。藤野さんは、世界と日本のこの違いをどのように感じていらっしゃいますか?
藤野英人さん(以下敬称略):アメリカの会社が非常に好調で、中国の会社も伸びてきているなか、日本全体で見ると、なかなか成長しきれていない感じはしますよね。
その最大の問題が何かというと、日本社会が古い価値観のままでアップデートできていなくて、新しい時代に対応しきれていないからでは、と思っています。
ここで、日本における「真面目さ」が議論になると思います。
私はこの議論が好きなのですが、「真面目」という字は、「真(しん)の面目(めんもく)」と書くんですよね。もともと仏教的に「しんめんもく」という言葉もあり、リアルフェイス、という意味。つまり、真の姿ということなんです。
中国の漢詩で「花は紅 柳は緑 真面目(しんめんもく)」という言葉があります。
お花は紅く、柳は緑色と、ものはさまざまな色を持っている、それこそが真面目なのだということ。
真面目というのは、元は「それぞれが、それぞれである」という意味なんです。どちらかというと、ダイバーシティ(多様性)に近い言葉ですね。
「それぞれ、男であり、女であり、老人であり、若者であり、中年であり、肌の色も関係なく、それぞれがそれぞれのあり方であるべき」、という意味。
だから私は「真面目」という言葉がすごく好きなのですが、日本での今の受け止め方は、“約束の時間に対して忠実”という意味合いで使うなど、言葉本来の意味を歪んで捉えてしまっているように思います。
そういう日本だから、息苦しく感じているのではないでしょうか。
「真面目」の言葉の原点に立ち返って、それぞれが、それぞれのあり方であるべき、という考え方にみんながなっていくとよい方向に向かうのでは、と思っています。
――一方で、例えばアメリカの企業など、どんどん伸びているところもたくさんあります。
藤野:はい、世界的な影響力を持つアメリカのIT企業5つ、Google、Amazon、Facebook、Apple、さらにMicrosoftもいれて、頭文字をとって「GAFAM(ガーファム)」と言われていますが、これらの会社には、共通点があるんですよ。
その一つに、「哲学者」を採用することがあげられます。
哲学的な話を、役員会から新卒の会議まで、幅広い場所で行うんです。
「『買う』とは何か?(What is “buy”?)」といった具合です。Facebookでは、「コミュニケーションとは何か」という話をし続けるんです。
結果的に、これらがクリエイティブの源になっていきます。根本の根本について深く考えていく姿勢を大事にしているんですね。
では、これを日本の企業で同じようなことをしたらどうでしょうか。
例えば、マスメディアの会社で「メディアとは?」という質問を会議で投げかけたら、「目の前の仕事をしろ」といわれるケースが多いのではないでしょうか。
どういうメディアであるべきかを考えましょうといっても、早く原稿を書いてアップしなさいと言われるというのは、どの業界でも同じかもしれません。
――おっしゃるとおりかも……(苦笑)。
藤野:ですよね(笑)。私の場合は、「投資とは何か」と、常に考える会社でありたいですし、そういうメッセージを意識して発信するようにしています。
最終的に、それがお金儲けに通じる道だと思っているからです。
なぜかというと、根本的に物事を考えることは、非常に大事だからです。「そこの王様、裸だよね」というようなことを、ズバッと本質をつける人が、これから求められていると思うのです。
忖度というのは海外でもけっこうありますが、日本では特に強いです。
しっかり真実を見て、正しいことを伝えられる人が、社会をいい方向に変えていくと思うんですよね。
忖度を強要することは、下りのエスカレーターに一緒に乗っていくようなもの。あまり幸せな結果を生まないと思うのです。
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