父の背中を通じて見ていたバブル時代。とにかくカッコよかった
――バブルの頃、ノラさんは小学生だったそうですが、もともとバブルに対してどんなイメージがありましたか?
ノラ:当時、父親が「土地転がし」をしていて、うちは団地住まいでしたが、父親だけやたらとバブリーだったんです。すごく豪快なタイプでした。ガンガン飲んで人にご馳走したり、ゴルフをしにグアムに飛んで行ったり。バブルっぽい遊び方はするけど、仕事は楽しそうで、「天職だよ!」と言っていました。それがカッコよくて、父が輝いて見えたんです。
だから父の背中を通して、バブルへの憧れを抱いていたと思います。団地の上に住む女子大生のお姉さんもいましたが、前髪がとさかみたいになっていて、いつもアッシー君が迎えにきてチヤホヤされてて。「私もいつか、ああなるんだ」なんて憧れていました。
ネタにすると決めていろいろ調べ始めてからは、バブルを知れば知るほど、やっぱりかっこいい時代だと思いましたね。男性は女性にとことん尽くして、女性は女性で「いい女でメンゴ!」と、堂々としている感じ。キャラクターも作りやすかったです。
――甘糟さんが「バブル世代は楽観的」とおっしゃっていました。この世代の人たちの気質について、ノラさんはどのように捉えていますか?
ノラ:仕事で出会うバブル時代の方たちを見ても、すごくかっこいいと思います。散々おもてなししてくれるのに、遅くまで連れ回したら悪いという気遣いがあるから、引き際も見事で、いつの間にかいなくなっていたりする。飲むならケチケチしないでパーっとやろう! みたいな潔さもあります。
バブル世代の人たちからは学ぶことが多くて、下の人に伝えていきたいと思いますね。
甘糟:ノラさんみたいに言ってくれる方もいるけど、逆に「上司がバブル世代だと、口ばかり大きいことを言って実際は動かないから本当に大変」みたいな声もよく聞きます。耳が痛いですね......(笑)
あの頃は「男性に奢ってもらうのが当然」と本気で思っていた
――逆に甘糟さんのようなバブル世代の方から見て、下の世代の価値観はどう映りますか?
甘糟:真面目だなあって思います。石橋を叩いて渡るような感じ。さすがに最近は私でさえも慎重になったけれど、昔は「なんとかなるでしょ」っていうノリでした。実際に経済が回っていたので、みんななんとかなっていたんです。
でも今の若い方は、慎重にならざるを得ないですよね。正規と非正規の社員の割合だって昔と全然違うし、一つの会社に就職したら一生安泰! ということもないでしょうし。
――下の世代と一括りに言っても、20、30、40代で全く価値観が異なりそうです。ノラさんは当時小学生だったとのことなので、景気の良さなど、当時の空気感を子供ながらに感じていましたか?
ノラ:はい。感じていました。だからこそ憧れもあったと思います。
でもバブルネタをやるようになったら、周りが面白がってバブリーなVIPルームに連れていってくれたり、バブリーな人が寄ってきたりと、少しずつバブルの体験をするようになったのが面白いです。
――20代の方やずっと下の世代だと、たぶん全く違う捉え方なんでしょうね。
甘糟:20代からしたら、バブル期なんて大河ドラマで今やっている幕末を見るくらい違う時代の話に聞こえるでしょうね。たとえば当時は、女性が女らしさを武器にしてご馳走してもらったりした時代だったけど、女性の働き口も本当に少なかったですし。
――著書『バブル、盆に返らず』の中でも、「男性に奢ってもらって当然」という価値観を下の世代の女性から咎められたというエピソードがありましたね。
甘糟:そうそう。編集者の女性の方から「男性に奢ってもらうのが当たり前なんて、働いている女性として恥ずかしい意識はなかったんですか」と言われて。当時抱いていた「奢ってもらえない方が恥ずかしい」という感覚は共有できないんだなあと思いました。彼女の方がまともな感覚ですね。
この本についての読書会をしたのですが、若い読者の方が思いの外たくさんいらっしゃったんです。私が当然と思っていたことも「本当だったんですか?」と聞かれました。ディスコの入り口で服装を見られて、垢抜けていない人は入場できないとかね。今なら炎上しますよ。
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