人間のデジタル化が当たり前になった時代を描いた本谷有希子さんの新刊『あなたにオススメの』。本を読み「そんな世界のほうが、もしかしたら生きやすいんじゃないか」と語るのは、テレビ番組「セブンルール」で本谷さんと共演中のタレント、長濱ねるさん。対談の2回目は、デジタル時代だからこそ生まれてしまう悩みについて。本谷さんが長濱さんに勧めたこととは……?
たいして共感してなくても「いいね!」する
長濱ねるさん(以下、長濱):私たちの世代が使う「共感」って、もとの意味よりずっと安くなってる気がするんですよ。
本谷有希子さん(以下、本谷):それはどういう意味?
長濱:例えばSNSのフォロワー数がその人の評価材料になることがあるらしいんですが……。
本谷:あるらしいね、まずフォロワーが何人いるか見るっていう。
長濱:でも私たちは、正直あまり考えずにフォローや「いいね!」してることもあると思うんです。お付き合いで「いいね!」するし、相手が「 いいね!」してくれたらお返しに「いいね!」するし。上の世代が思うほど、相手に共感していない場合もありますね。
本谷:そうなんだ。大人たちはそれで影響力を判断して右往左往してるんだね。
何をおさえておけば「映画好き」を語れるのか
長濱:世の中にいろんな情報がすごく溢れているから、ひとつずつを深堀りしたり、深く考えることができなくなってる気がするんです。たとえば「映画ファン」って言っても、この監督が好きと思って観る人もいるけど、ネットの「オススメ」だったり、これが流行ってるとか、これをおさえておけば“感度がいい”と思われるとか、そういう理由で選んでることもあると思うんです。自分も「本好き」「映画好き」っていえるかなって思い始めちゃって……。
本谷:それってどういうこと?
長濱:私は映画を観るのがすごく好きなんですが、かといって自分の生まれる前の巨匠の作品を知ってるわけでも、マーベル作品にめちゃくちゃ詳しいわけでもなく、ただ単に自分の興味のある映画を興味のある順に追ってきただけなんです。それって自分の中では「映画好き」なんですが、あるお仕事でご一緒した人から「ねるちゃんって“映画好き”なんだよね。じゃあクリストファー・ノーラン監督でどれが好き?」って聞かれた時に、一作品も見たことがなかったんです。じゃあ私って「映画好き」って言えないのかな、そうしたら「映画好き」とか「音楽好き」とか「本好き」ってなんなの? って思っちゃって……。自分をカテゴライズする時に、何を押さえておけば「映画好き」って言えるのかなって疑問に思って、自分に対してすごい苦しくなっちゃって。
本谷:たぶん「映画が好き」と「映画好き」っていう言葉のニュアンスが微妙に違うんですよね。「映画好き」って言うと「映画全般をジャンルとして好き」って意味合いにとられるから、「ノーランの何が好き?」って聞かれるのはちょっと分かる。今度「映画好きなんだよね?」って聞かれたら、「あ、違います、映画が好きなんです」って答えたら、そういう間違いは起こらない気がするよ(笑)。
長濱:え~、面白い。
本谷:本当ちょっとしたニュアンスの違いなんだろうなって。難しいね、何が好きかとかは。語れるほどわかってることってほぼないし。
長濱:私も一個もないです。
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