朝ドラとは思えぬ恋愛力ぶりに、11月1日の放送スタートからわずか1週にしてお茶の間の女性たちの心を鷲掴みにした『カムカムエヴリバディ』。かく言う私も、「さあ、カムカムを見るぞ」と毎日ウキウキとテレビの前に座っております。こんなに胸が締め付けられるのは、2011年の朝ドラ『カーネーション』の尾野真千子と綾野剛の道ならぬ恋以来かも……。 

月曜日〜土曜日 am8:00からNHKにて放映中。 NHK公式サイトより。
これまでのストーリーは?
ヒロインは、街の小さな和菓子屋の娘・安子(上白石萌音)。店に菓子を買いに来た繊維会社の跡取り・雉真稔(松村北斗)と出会い、恋に落ちます。この稔さんがまた、歩けば爽風が吹くような昭和の好青年で……。

それはさておき、英語という共通の趣味でつながった二人は、文通を通してその清らかな恋を温めていきます。が、いわゆる身分違いの恋。日本が不穏な戦争の空気に包まれていく中、安子も稔も、どうにもならないお家事情に阻まれ、その想いを諦めようとします……。

というのが、目下のストーリー展開です。こう聞くと、「まあよくある話だよね」と思われた方が多いことでしょう。が、よくある話というのは、すなわち人気のある話でもあります。だからこそ、演じ手、そして作り手の力量によって、ベタにもなれば、我が身に重ねてのめり込んでしまうほどの良作となることもある。そして『カムカムエヴリバディ』は、完全に後者なのです!

 


大人の胸キュン旋風を起こす
久しぶりの朝ドラ


その理由はというと、何のエビデンスにもなりませんが、この私が毎回目を潤ませるほど2人の恋模様に惹き込まれているから。というのも私は、周囲の仕事仲間たちの間では有名な(?)非・恋愛体質だからです。もともと一人が大好きで、30代半ばにして結婚願望を放棄すると、途端に恋愛じたいの優先順位が最後尾に回されてしまいました。自分のやりたいことに執着が強い人間だったところに、結婚という目的がなくなれば、その前段階の恋愛に労力を割かなくなるのは当然の流れだったと言えるでしょう。当時仲の良かった編集者さんからは、「完全に恋愛の灯が消えたのが分かった」と指摘されたほどでした。

それからウン十年……。たまに「気になる人はいないんですか?」などと聞かれると、あまりにその手の思考細胞を使っていないことから、「えっと……」としばらくどう思考していいのか分からず固まってしまうくらい、ときめきとか切なさとかいった感情から遠ざかっていました。その私が、毎朝若い二人の恋を見て、「ああ、そうだよね!」「辛いよね!」「彼の存在が希望なんだよね……」などと、かつて自分にもあった熱かりし感情をよみがえらせているのです。我ながら、これはすごいことかも、と思ってしまいました。

こう書くと、私一人が勝手に盛り上がっているように思われるかもしれませんが、こんなふうに眠れる恋愛細胞を起こされたのはどうやら私だけではないよう。ネット上の『カムカムエヴリバディ』記事に関する視聴者の書き込みを見ていると、同じような感情を綴っている人が少なからずいるのです。

「二人の心の通わせぶりを見ていたら、自分は最近、いや、もうずっと、心と心が通い合うような関わりなぞ、誰ともしていないよなぁと、心がざわつきました。長いこと忘れていた、人と人との交流や関わりから生まれる思いや感情……。『そうそう、この感じ』心の奥底にまだありました」
「二人の純愛が眩しくて、見ていて若かった頃(幸せだった頃)を思い出さされます。待つ喜び、不安、思いやりが懐かしい。私はおばちゃんですが、キュンキュンします」

などなど……。

 
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