受験生の親を「ATM」と呼び、塾講師の仕事を「サービス業」と言う。『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系/以下、『二月の勝者』)の黒木(柳楽優弥)は、かなりやばい塾講師です。
たしかに、学校と塾は求められるものがちがいます。学校は、勉強だけでなく人間関係や社会のルールを学ぶ場所。対して受験塾は、生徒を志望校に合格させることが“成功”なのかもしれません。それにしても、黒木は割り切りすぎな気が……。
ただ、子ども相手の職業だから“過激”と言われるだけで、もし彼がビジネスマンなら“やり手”と呼ばれていたのでは……? ということで本稿では、ビジネスや恋愛でも使える<黒木流 相手の心を仕留める方法>を分析してきたいと思います。
<Chapter1>相手の“本心”を読み取る
相手の心を開く上で、一番大事なのが“本心”を読み取ること。上っ面の気持ちではなく、“本心”なのが鍵です。『二月の勝者』第1話でも、黒木の鋭い洞察力が、一人の生徒の人生を変えました。
第1話でスポットが当たった生徒は、サッカー少年の佑星(佐野祐徠)。小学校4年生から受験塾に通うのが主流のなか、6年生からスタートした佑星は、なかなか勉強に追いつくことができません。加えて、彼の父親は息子をサッカー選手にさせることを夢見ている。父親に「勉強をしている暇があれば、サッカーを頑張れ」と言われ、勉強にも身が入らない……。
「毎日(ボールを)いじってないと、感覚が狂っちゃう」と言う父の指導を聞き、塾でも、常にボールを触っている佑星。そんな姿を見た佐倉(井上真央)は、「勉強も、サッカーみたいに頑張れるといいね」と声をかけました。佑星は、サッカーが大好きなんだな…と思ったのでしょう。しかし、その言葉は裏を返せば、「勉強は、サッカーみたいに頑張れていない」という意味にも捉えることができます。
その一方で、黒木は佑星が勉強に力を入れたいと思っていることを見抜いていた。「(リフティング対決をして)もし君が勝てば、これまで通りサッカー三昧の毎日が送れます」と言った時には、もう気付いていたのでしょう。佑星が、「サッカー三昧の毎日を送りたいわけじゃない」と思っていることを。
さらに黒木は、“これまで”の頑張りと、“これから”を切り離すことはしない。「勉強も、サッカーみたいに頑張れるといいね」ではなく、「粘って頑張った経験のある人は、強い」と声を掛けます。「この答案は、解こうと粘ったのがよく分かる答案です。スポーツや何かで長い期間取り組んできたものがあるのでしょう」と言ったことで、佑星の心に「勉強を頑張りたい」という火を灯すことができた。それも、黒木が彼の答案の“本質”を見抜いたからこそのことです。
普通は「ずっとサッカーボールを触っている→サッカーが好きなんだな」となってしまうところを、黒木は「親の期待を背負っているからかもしれない」「プレッシャーを感じているのかも」と“本心”を読み取る努力をします。常に人の心の裏を読むのはしんどいですが、大事なポイント(ex.ビジネスでの勝負の日や、大事なデートの時)には、黒木のように「本当は……?」と相手の“本心”を読み取る努力をしてもいいかもしれません。そうすることで、結果的に相手が欲しがる言葉をかけることができます。
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