今年、4年ぶりにおこなわれた衆議院選挙。終わってみれば与党の勝利と、国民は現状維持を選んだ結果でした。一方で、「本当にこのままで大丈夫なの?」という先行き不安を覚えた人も相当数いたことでしょう。

社会が不安定になってきたときに、真っ先にダメージを受けるのは弱い立場の人たち。その中には“若くない女性”というカテゴリーの人たちも含まれるでしょう。では具体的に、女性は年をとるとどのような社会的“壁”にぶつかる可能性が高いのか? そして自分を守るためには、どのような準備をしておくべきなのか? 『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた』の著者、50代ライター・和田静香さんにお話を伺いました。

「私の不安は日本の不安」と語る和田さんは、女性だからこそ持つべき視点、学ぶべき社会の仕組みがあると訴えます。

 

和田静香さん
1965年、千葉県生まれ。相撲、音楽ライター。著書に『世界のおすもうさん』、『コロナ禍の東京を賭ける 緊急事態宣言下の困窮者支援日記』、『東京ロック・バー物語』などがある。12/27に最新著書『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』(左右社)が発売されたばかり。

ーー今年8月末に出版された著書が大きな話題になっています。衆議院議員の小川淳也さんに、私たちが日ごろ抱えている素朴な疑問を素直にぶつけ、分かりやすい答えを引き出してくれています。本当に、読みながら「そういうことだったのか!」と何度も膝を打ったのですが、もともと政治に関心は強かったのですか?


和田 全然ですよ。ただ10年ぐらい前から、何だか生活が苦しい、私がダメなんだ……と一人で悶々としていただけの人間でした。

 

――それがなぜ、国会議員に取材して1冊の本を出すほどに!?

和田 一番のきっかけはやはり新型コロナウイルスの蔓延だったと思います。その前から本業のライターだけでは食べていけなくて、ずっとコンビニやレストラン、おにぎり屋さんなどでアルバイトをしていたんです。それがコロナ禍でクビになって。それまでは、苦しいけれどバイトをすれば何とかなると思っていたのに、それもままならなくなった。これはいよいよ生きていけないかも! と絶望したんです。実際、ライターの収入はどんなに頑張っても月に10万円ぐらいでしたから。

――東京で、10万円で生活するのは難しいですよね。それでどうしたんですか?

和田 バイトと掛け持ちしましたが、毎日が不安でたまりませんでした。もちろん生活保護を利用することも選択肢としてあることは知っています。友人が生活困窮者支援をしているし、私もそうした記事を書いてもきました。当然の権利です。なのに自分がそれを受けるか? と問われたら、スティグマに縛られて動けない。そう感じてしまう自分にもまたショックを受けたりしていました。

――そこから「政治に訴えなくては!」と思い始めたんですね。

和田 いや、実はそれでも「政治に!」という発想はなかったんです。関心を持つようになったのは、たまたま小川さんのドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』に関する記事を作ってほしい、という仕事の依頼を受けたから。そこで映画を見たら、これがめちゃくちゃ良くて。議員になるのもやっと、なっても弱い野党の中ですら出世できない。それでも小川さんはあきらめずに奮闘している。この人に話を聞きたい!」と何も考えずに取材を申し込んでしまったんです。実際、最初の取材のときも小川さんは何度も「あきらめない」と言っていて、それがめちゃくちゃ心に刺さりましたね。

――国会議員に会って、和田さんが一番訴えたかったことは何だったんでしょう?

和田 いざとなると自分が何を訴えたいのかも分からなかったんです。それで小川さんの政策集や教えてもらった課題図書、自分で本屋さんや図書館で探した本を必死に読んで勉強して、質問を立てていきました。政治のことを尋ねるのは、何も考えてなかった私にはハードルが高かったですね。

 
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