パラダイムシフトの今、「美の価値観」を刷新し続けてきた美容ジャーナリスト齋藤 薫さんが、注目したいある視点をピックアップします。

写真:代表撮影/AP/アフロ


皇族は感情を表に出すべきではない?


「涙は、皇族にふさわしくない。感情のコントロールができていない証で、望ましいとは言えない」……そんな表現で指摘を受けたのでしょうか。

 

禁じえぬ涙と言うものがあります。どうしても抑制の効かない不覚の涙……。百歩譲って、自分のことで流す涙は、抑制することができたとしても、他者への慈愛の涙は禁じ得ない、それが心ある人の本能であり、生理であるはず。

愛子さま成年の行事に際して、何度となくニュースで回想されたのが、まさに20年前のご生誕の時の記者会見。皇太子妃時代の雅子さまが、「生まれてきてくれてありがとう、と……」そう発言されたあたりから、涙で声が詰まってしまい、当時の皇太子さまが、大丈夫? とばかりに背中に優しく手を当てられたあの場面は、とても感動的でした。

今は天皇皇后となられたお二人が、しみじみとした温もりある人間性を見せられたそのシーンは、国民の心に深く刻まれているはず。何度見ても胸が熱くなりもらい泣きをすると言う人も、きっと少なくないはずなのです。

ところが、じつはこの時の会見こそが、皇室内ではいかがなものかと問題視された可能性があるとも言われています。その記事を目にした時、小さく戦慄するほど残念な気持ちになったもの。

皇族は私的な感情を表に出すべきではないというのが、皇室の伝統的な考えであることは、なるほどそうなのだろうと納得が行きます。でも、“涙ぐむこと”までが否定される世界であることには、やはり違和感を感じざるをえません。