時代の潮目を迎えた今、自分ごととして考えたい社会問題について小島慶子さんが取り上げます。

理系の勉強は好きですか。科学者になりたいと思ったことはありますか。

2021年8月に、東京大学大学院数理科学研究科教授の緒方芳子さんが、数理物理学の世界的な賞であるポアンカレ賞(注1)を受賞しました。量子スピン系の数学的理論における画期的な業績が評価されての受賞で、日本人では2003年の荒木不二洋氏以来18年ぶり、日本人女性では初の快挙です。

2021年にスイスで行われた数理物理学国際会議でアンリ・ポアンカレ賞の授賞式があり、学習院大学理学部物理学科教授の田崎晴明さんが、緒方芳子さんの業績を紹介しました。


女性の学部学生の割合がずっと2割に留まっている東大の中でも、特に理系は男性が圧倒的多数を占めます。たとえば、2021年11月現在、数学科のある理学部の学生数は662人ですが、女性はたった61人で、1割にも届きません。東大では昨年、理事の半数以上が女性となり、女性や外国人など多様な人が学びやすい環境づくりに力を入れています。受賞した緒方さんの所属する大学院数理科学研究科でも、なんとか女性を増やしたいという声が上がっているそうです。

 

最近は「STEM(科学・技術・工学・数学)分野にもっと女性を」と言われていますよね。今年の4月には、奈良女子大学に日本の女子大初の工学部が開学します。まだまだ理系の女性の割合は少ないですが、STEM分野を志す女性を応援する声は高まる一方。シンプルに考えても、人口の半分からしか研究者が育たないのは効率が悪いですよね。チャンスがほとんど与えられていないもう半分の人たち、つまり女性を後押しすれば、より多くの優れた研究者が世に出ることになります。これは政治や経済の分野でも同じことです。

 
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