おはようございます!

シンガポールの家は子どもたちも住む家だけれど、夫の家。実際の家事は住み込みのヘルパーさんが担当するにせよ、家のことに采配をふるう主夫は夫という意味で夫の家なのです。

暑い国の家らしく窓が大きく開放的なつくりになっているところや、現地で買った中古家具を多く取り入れ入れているという点で、アジアらしい雰囲気ですが、なんともいえずフランス人好みの空間。

夫の家で過ごすたびに、自分の日本での暮らし方を見直したくなります。ひとことでいうと、私の生活空間は居ごこちが効率の犠牲になっている。夫の家も、住んでいる人数に対して十分な広さはないし、家で仕事をするのでPCやモニターは必須、ガジェット好きなので持っている電気製品の数は私より多いくらい。さほど条件がいいわけではないのに、なんとなく快適なのはなぜなのでしょう。

今回の滞在で学んだこと。部屋には持ち主の頭のなかが、そのままあらわれる。

在宅ワークをしているとおちいりがちな罠だと思うのですが、仕事に心をもっていかれたまま家を整えると仕事中心の住まいになります。仕事というのはたいしたもので、心だけでなく部屋だけでなく、ついには生活の中心にまでどっかり腰をおろし、気づいたら仕事ばかりして一日を過ごしていることも。

体力無尽蔵だった20代のころならともかく、今となってはめりはりに乏しい毎日は疲れるし、何より効率が落ちます。

仕事からはなれて好きなことをしたり、家族と語らったり、食事を楽しんだり。そういう暮らしの喜びに自覚的にならない限り、部屋が居ごこちよくなることはないんだろうなぁ。

朝食やアペリティフ、ちょっとした休憩やコーヒータイムにも。家のなかのお気に入りの場所にわざわざ移動する夫を見ていると、心地よい時間への、貪欲な情熱が部屋の快適さを作っていると気づきました。

週末のアペリティフの時間を大事にする夫。たしかにすばらしいのだけれど、後回しにしがちな私が自力でこの時間をつくりだすのはむずかしいのです。

東京の家は、私と小さい息子のふたり暮らし。シンガポールの家のような広々としたテラスも青々としたグリーンもないけれど、一時期この部屋に5人で暮らしていたことを思えばスペースはふんだんにあるはず、居場所のめりはりをつけようと思えばできるはずです。

なのになぜか私はリビングにワーキングスペースをしつらえ、寝る時以外はリビングで過ごすような空間の使い方をしていました。「眺めのいいリビングがいちばんのお気に入りだから」が理由なのですが、仕事をしていても家事が気になるし、仕事時間外でもPCが目に入ると吸いよせられるようにメールをみたり作業をしたりと、何をしていても気が落ち着かない。

そこで今は使っていない子ども部屋にワーキングスペースを移しました。なぜこれまでそうしていなかったのかという気もするのですが、せまいし、暗いし、眺めが悪いし、物おきスペースにちょうどいいし、家族や友人が泊まりにきたときに寝室にするからそのたびに立ち退くのもめんどうだし⋯⋯。そこを使わない理由は山ほどあったのです。

デスクがあったところにお花をかざったら、リビングがぐんと華やぎました。

気に入らなかったらまたリビングに戻ればいいと思ってデスクを移してみたら、あら不思議。苦手だった場所なのに、仕事部屋としてはとても使い勝手がいいじゃないですか。

リビングで仕事をしているときは、音が気になって好きな時間に食洗機やルンバを使えなかったのですが、他の部屋で仕事すればリビングではいつでも家電を使えるので家事もはかどる。何よりもよかったのは、仕事部屋を出たら休憩モードになれることです。これまでお茶を淹れてても料理をしてても食事をしてても、「仕事の片手間」感が抜けていなかったことに気づきました。

好きじゃないと思っていた子供部屋も、ほこりを払ったり、空っぽだったベッドにインド綿のカバーをしいて即席のソファにしたり⋯⋯。ちょっとだけでも手をかけてみると、部屋全体が一段明るくなったみたいに感じよくなりました。家って生きてるみたい。人間に応えてくれます。

「フランス人だから」とひとくくりにはできないですが、うちの夫は暮らしに対する感性が私より豊かです。年下の夫は出会った頃まだ学生で、ワンルームの学生寮に住んでいて、必要最小限のものを置いたら、文字どおり足の踏み場もないようなせまい部屋でしたが、カーテンがキッチュな水玉だったり間接照明を置いていたり、こだわりの片鱗が見えるようなインテリアでした。当時は独身で生活の現実も楽しさも何も知らないふたりでしたが、実際に暮らしはじめおまけに子育てにまで取り組んでみると、暮らしのことを早く、的確に学んだのは夫の方でした。

多くの家庭では暮らしに気を配るのは女性の方かもしれません。こればかりは関心のなせるわざ、多少努力したところでうまくできた気がぜんぜんしないので、うちは男女逆転していてよかったです。とはいえ今は別々に暮らしているので、気持ちいい暮らしに一歩でも近づくよう精進いたします。

猫の額どころかネズミの額のようなうちのベランダ。気分よく外をながめられるように掃除することにしました。