室生犀星の詩の冒頭部分。耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。故郷から遠く離れたところから、ふるさとを懐かしがってうたったことば……そんな風に解釈されていることも多いようですが、詩の全体を読むと実は違います。
室生犀星が、都会から故郷・金沢に帰り、「ずっと遠くから懐かしんでいた故郷だが、実際に戻ってみるとそこは思っていたような場所ではなかった」と気づいたということを綴った詩のようです。
詩の全文は知らなかったけれど、不思議と誤解せずこのことばの意味を理解していました。故郷とか家族って、ちょっと離れているくらいの方がちょうどいいよね。そんな実感が自分の中にあったからでしょうか。
今週は、〔ミモレ編集室〕で選書ブログをアップする週です。海沿いの街に住むエレガントなメンバーさんからのリクエストは、「家族の情景を描いた小説」。相方の悠さんのセレクトにうなりながら、私もやっと一冊選びました。
このブログでは、(小説指定だったので)選から漏れた本を三冊ご紹介します。「ゆうかな選書」番外編、どうぞ。

家族についての感覚は今、二つに分かれつつあるのでしょう。従来型のキツい枠を嫌う人が逸脱すればするほど、枠の中にいる人達は、枠に守られている実感を強く持ち、その枠をしっかり固めるようになってきたのではないか。

むしろ、家族のあり方は多様であるべきだ、などと言っている時点で、実際かなり古臭いのかもしれません。すでに、日本でも離婚率が三割を超えています。家族のあり方は多様だという現実がもうあるのです。そのことを、社会は認めるべきでしょう。

人間は希望がないから死ぬんじゃない。死にたくないから希望をつくるんだ。(中略)希望の中身は、家族だったり、仕事だったり、するんだろうね。(中略)でも、家族だけじゃ、家族だって荷が重い。希望はまれに誰かの負担になる。希望の中身は、分散できるほど安心だ。

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