韓国の政治、国際政治にも影響力を持ちうるBTS。ARMYは彼らを守るため自制している
小島:韓国国内でのARMYの動向について伺いたいのですが、今年3月の大統領選に際しては、韓国のBTSファンは何らかのアクションを起こしたのでしょうか? 2020年のアメリカ大統領選では、ARMYがトランプ大統領の再選に反対する動きを見せて話題になりましたね。
また、ユン政権が誕生したことによって、メンバーの兵役について、韓国国内ではどんな見解がありますか? 一番年上のJINは今年12月で30歳になるので、兵役に行かねばならないのではないかと見られていますが。
イ:大部分のファンは、自分たちの政治的な考えを強く主張しすぎると、後にアーティストに悪い影響を与えるのではないかと心配しています。だから、自分の政治的信念に基づいて投票はしますが、できるだけ考えを表現しないようにする雰囲気が韓国のARMYにありました。
韓国のARMYは、アーティストを愛するファンとして存在するのみならず、マネージャーのような気持ちがあるんです。アーティストのキャリアを管理し、外部から守らなければならず、彼らが進む道をスムーズに整えたいという使命感があります。だから政治的な考えについては自制していたのだと思います。
あと、JINの兵役については、政権の問題というよりも、韓国の男性の意識の問題です。非常に複雑で簡単に解決するのは難しい。でも、純粋芸術やスポーツの分野では兵役免除制度がありますよね。それと比べて大衆芸術は免除されないのは不公平だという意見も存在し、兵役の基準を見直すことが必要なのだと思います。たとえば今後は兵役免除に一切の例外を認めないようにするとか、あるいは一般の人も全員兵役免除して職業軍人のみにするとか。法改正が必要な時期に差し掛かっているのではないかと。
小島:男性だけが兵役を課されることに不満を抱く若い男性の一部が、女性にその矛先を向けているという問題もあるようですし、制度自体を問い直す時期なのかもしれないのですね。
最近のグローバルなARMYの動きとしては、ロシアの侵攻によって国を追われたウクライナ難民を支援する寄付活動を行っていますが、当然ながらロシアにもたくさんARMYはいるわけですよね。ロシアとウクライナのARMYの間で対話がなされるなど、分断を生まないように動きがあったのでしょうか?
イ:ウクライナのARMYは、HYBEにたいしてロシアでの活動、たとえば映画の上映や配信などをやめてほしいと要求しました。SpotifyやNetflixも、ロシアとの関係を持つことをやめましたよね。また、私が知っている例では、ラスベガスでBTSのコンサートが開催された時に、ウクライナの国旗を持ってきたARMYに対して連帯しようと意志表明する動きがありました。すごく小規模なものではありますが、見逃せない現象ですよね。
ファンダムがこれほど多様になり、ロシアにもウクライナにもARMYがいると、BTSが国家対国家、あるいは集団対集団の利益が衝突する問題について発言するのに注意が必要になってくる。そういうジレンマを抱えているのも、幅広いファンがいるBTSだからこそではないでしょうか。
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