お仕事帰りに同僚と。大切な家族や友人と。
心からおつかれさまと伝えたい日のレストランを厳選してご紹介します。

熟成肉流行りで、近年、肉に押されぎみの魚料理。 が、ここ2年くらいで、魚に力を入れているイタリアンが増えてきた。人気店が手がける2軒は、肉料理はおろか、肉のダシさえ使わない徹底ぶり。でも、イタリア沿岸部を回れば、豊富にあるんです、素朴でおいしい魚料理が。


小田原漁港からの魚を、前菜盛り合わせであれこれと!
ペスケリア ラ・ルーナ・ロッサ 赤坂

前菜の盛り合わせ¥2000。魚や野菜で作る前菜は10数種類。野菜の前菜には、主に長野県の大島農園から届く野菜を使用している。

白子のフリットに赤海老の香草パン粉焼きにヒラメのカルパッチョにイワシのマリネ……。中目黒の人気店『ラ・ルーナ・ロッサ』が手がけるペスケリア(=魚屋さん)の前菜は、魚と野菜だけ。しかも半分以上が、神奈川県小田原の漁港からその日に届く魚介で作ったもの。どれもシンプルなのがおいしくて、イタリアンの魚料理の豊かさをしみじみ。バリカタに茹で上げ、魚介のダシを吸わせたリングイネも旨みたっぷりで、肉なしでも満足、満足。

本日のスペチャーレから、モンサンミッシェルのムール貝とプチトマトの地中海風バベッティ(リングイネ)¥2400(ご希望の方は要問合せ)。魚介に使うパスタは、バベッティなど、しっかりとしたものを使用。小粒ながら旨みの濃いムール貝のダシをしっかりしみ込ませている。
ホウボウと赤座海老のオリーベ・エ・パターテ。約2人前¥3800(ご希望の方は要問合せ)。魚と海老は、ジャガイモやヒヨコ豆に水だけを加え蒸し煮に。オリーブの風味がアクセント。
赤坂の閑静な一角に2012年オープン。
シチリアの陶器がディスプレイされた店内は、寛げる雰囲気。

【ペスケリア ラ・ルーナ・ロッサ】
港区赤坂4-4-16フォーレスト赤坂4-4-16フォーレスト赤坂1F tel:03-6807-2660 営業時間11:30~14:00LO(土、日曜、祝日14:30LO)18:00~22:00LO 無休 テーブル30席 ランチ平日¥1000~ ディナーはアラカルトのほか、¥5400のコースあり。愛知県産あさりとサルディーニャ島産カラスミのリングイネ¥2000 ワインはイタリア産のみで、グラス¥600、デカンタ¥2000 



目移りしながら魚を選んで、一尾まるごとワイワイと
ボガマリ・クチーナ・マリナーラ 北参道

真鯛、赤海老、オニアサリなどを選んで、ストゥファート(煮込み)に。これで¥5500。トウモロコシの粉で作るポレンタが付け合わせ。

真鯛にカサゴに……おっ、活けのマテ貝まで! キッチン前の冷蔵ケースには、九州や浜名湖から届いた30種あまりの魚や貝がぎ っしり。 ここで好きな魚を選んで、好きな調理法で料理してもらうのが"ボガマリ"流。ズッパ・ディ・ペシェにするか、はたまたブイヤベースか。迷った末にオーダーし、魚の横に並ぶ前菜でワインを飲みながら待っていると、40センチはあろうかという木製の器でドーンと。口にすれば、魚介自体もさることながら、そのダシが染みたポレンタがまた、旨い。シチリア州カターニアの魚市場にある店を参考にしたという雰囲気、思わずテンシ ョンがあがる。マグロのトリッパも、鉄分を感じる濃厚な味わいで、赤ワインが進む。

  • マグロのトリッパ(胃袋)のトマト煮込み¥1400。サルデーニャ地方で実際に作られている料理で、食感も肉と似て、後を引くおいしさ。
  • 魚介のカルボナーラ¥2000。卵と、バリバリ挽いたコショウはおなじみだが、入っている具は、豚肉の加工品ではなく、燻製をかけたホタテやカキ、アサリ、ムール貝。しっかりと燻香がして、肉に負けないほどパンチがある。
  • キッチン前の冷蔵ケース。ここで魚を選ぶ。魚はすべて100g ¥800。『ランテルナ・マジカ』『イル・フ ィーゴ・インゴルド』の姉妹店として、ʼ13年11月にオープン。

【ボカマリ・クチーナ・マリナーラ】
東京都渋谷区千駄ヶ谷4-7-5 tel:03-6721-1858 営業時間:11:30~14:00、18:00~22:00LO 休:日曜 テーブル44席 ランチ¥1100~ ディナーの小皿料理¥400~、その日の前菜やパスタは黒板に冷蔵ケースの魚は100g(\800)ワインはイタリアのみ グラスは\600~で、白5種、赤2種ほど(すべて税込)

撮影/柳原久子 取材・文/齋藤優子 構成/藤本容子
FRaU 2014年掲載『おつかれレストラン』より ©講談社