おはようございます!

神戸女学院キャンパス見学の続きです。

見学ツアー前の監事の先生の講演で、ヴォーリズは、校舎が生徒の精神にあたえる影響を強く信じていたというお話がありました。

校舎が生徒を育てるって、どういうこと?

歴史をひもとけば、王宮や教会などの建築が人間の精神を表現する器になってきたことがうかがえます。でも実際のところ、ただの器がどうやって生徒に影響をあたえるのか。考えてみると、よくわかりません。

ヴォーリズ校舎の教育効果について、いろんなところで書かれていて、もはや全国区の広報部長的存在なのが、同大で教鞭をとられていた内田樹先生。

前回のブログにも内田ファンからの反応をいただきました。せっかくですので、今日は内田先生の文章とともにキャンパス見学をふりかえってみたいと思います。

内田先生によれば、ヴォーリズの建物は、探検をさそうミステリーに満ちているそう。

中庭をはさんで文学館と理学館という二つの建物が向き合っています。建物の高さは同じです。でも、文学館は二階建てなのに、理学館は三階建てなんです。外から見ただけではわからない。理学館では、二階の廊下の途中に細い階段があって、それを上がると「隠し三階」がある。そこにもいくつか部屋がある。中庭から見えない側には「隠し屋上」まである。ーー内田樹『複雑化の教育論』より
上が文学館、下が理学館の写真。たしかに理学館は外からは2階建てにしか見えないですね。

理学館の「隠し屋上」から見える山並みの景観と並んで、内田先生が好きなスポットとしてあげているのが、図書館本館三階のギャラリー。

図書館の閲覧室は二階にあるんですけれど、扉を押し開けて、階段を一つ上がるとギャラリーがある。ふつうの学生はなかなかそこに三階があることに気がつきません。ーー内田樹『複雑化の教育論』より
はい、こちらが三階ギャラリーです。
広くて、明るくて、静かな空間が学生たちに「好きに使っていいですよ」と言って差し出されている。南側の窓からは西宮の市内が一望できます。学生たちは思い思いに寝椅子に寝転んで本を読んだり、物思いにふけったりしている。ーー内田樹『複雑化の教育論』より
私もここでぼんやり本を読んでみたい。
二階の閲覧席からギャラリーを見上げると、さらに上に続くらせん階段が見えました。
らせん階段は屋上に続いているのでしょうか?残念ながら立ち入り禁止でしたが、見ているだけでわくわくする作り。


そんな仕掛けに満ちたヴォーリズの校舎は、単に好奇心をそそるだけではありません。

自ら好奇心をもってヴォーリズ建築の暗い廊下を進み、暗い階段を上って、扉のドアノブを回したものがそこに見つけるのは、「思いがけない眺望」と「思いがけない出口」だということでした。ヴォーリズは「校舎が人をつくる」と言いましたが、学びの比喩としてこれほど素晴らしいものはないと思います。ーー内田樹『最終講義 生き延びるための七講』より
チャペルの長椅子には、神戸女学院の校章であるクローバーのモチーフが。建築家の遊び心と愛を感じます。

学びのメタファであって若い人の分身のような学び舎

キャンパス内を探検していると、おしなべて暗い校内と、南ヨーロッパのような明るい外観のコントラストを感じました。

お話を聴き終わって講堂を出ると、外のまぶしさにクラッ。

ドアを開けて外に出るときの明暗の差に感じる”目眩”は、学びの擬似体験だと内田先生は言います。

世界の眺望が一変する。明るく広々とした風景の間に立つ。その開放感をヴォーリズの校舎は繰り返し擬似的に経験させてくれます。暗がりから抜けて、思いがけず明るいところに踏み出すときの目眩のような感じを身体的実感として繰り返し経験させることが学びの場に不可欠だということを、ヴォーリズは直感的に理解していたのだと思います。ーー内田樹『最終講義 生き延びるための七講』より
乳白色のステンドグラスもクローバーのモチーフ。総務館の格調高いエントランス。すごい好き。

教育者の目から見ると、建物自体が学びのメタファになっているんですね。

それを学生側からみると、校舎を分身のように感じるのではないかと思いました。

好奇心と不安をもって自分の内側を探っている、まだ幼さの残る人生の一時期。うす暗くて全貌は見えないけれど、自分の中にはまだ知らない小部屋や屋上が隠されている。それはきっと、居心地のいいアジールだったり、見晴らしのいい眺望だったりするのだろうと、このキャンパスにいれば信じられそうです。

自分の内面と、まぶしく広がる外の世界がドア1枚をへだててつながっているけれど、今はまだ安全な場所にとどまることが許されている。それが、学生時代なのかもしれません。

ヴォーリズの校舎たちはとなりあい、あるいは渡り廊下でつながって、まるでひとつの有機体のようです。

講堂の脇にある吹き抜けの廊下を行くと、右側にちいさな扉があらわれます。それがチャペルへの入り口。

講堂の脇の廊下は、おとなりの建物と共有され、その廊下を奥へと進むとチャペルの建物に境目なくつながっていて、歩いているうちに今どこにいるかあやふやになります。まるで迷路にまよいこんだみたい。

レトロな表札とレースカーテン。

特に心を惹かれたのが、建物の間にはりめぐらされた渡り廊下。

 

渡り廊下を歩くときって、いつもどこかにいく途中なんですよね。感じのいい意匠がほどこされ、雨や風から守ってくれる渡り廊下は、行き先への期待と不安をいだいて歩みを進める若い人を見守ってくれているようです。

 
 

世界と自分の謎を探求しながら、やがて来る旅立ちに備える短い学生時代。そのすべてをやさしげな生き物のように包むキャンパスは、ヴォーリズの若い人への深いまなざしを感じる空間でした。

年末から来年にかけても一般公開が予定されているそうですので、気になる方はチェックしてみてくださいね。