寄席は“足湯”。ふらっと入って、温まっていってほしい。


――これを読んで「どっちも行きたい!」と思った読者のために、独演会よりももう少しだけハードルが高そうな【寄席】の選び方を一之輔さんに伝授していただきました。

一之輔:寄席というものの雰囲気を楽しむのなら【新宿末廣亭】が一番いいかもしれないですね。趣のある建物も含めてね。街そのものを楽しむんだったら浅草にある【浅草演芸ホール】や上野にある【鈴本演芸場】がいいんじゃないですか。浅草は観光地だからあまり行かない人もいるかもしれないですけど、ふらっと入ってふらっと出ることもできますから。芸人もいっぱい出てくるんですよ、ここは。鈴本演芸場はしっかりした落語を聴くのにいいと思います。ひとりひとりの持ち時間も少し長いですしね。

 

池袋の【池袋演芸場】は狭くて明るくて距離が近い。だから、噺家が普段喋らないこともマクラで言ったりとか、なかなか普段掛からない落語もそこで聞けたりもするんです。噺家がすごくゆったりと喋っているのでそういうのを味わいたかったら池袋もいいかもしれません。まあでも、ハズレることを気にせずに(笑)。そりゃあ生モノですからハズレたなということも正直あると思いますが、噺家がいっぱい出てくるのでその中で好きな人、ちょっと気になった人を見つけてもらえるとありがたいと思いますね。

僕は寄席って“足湯”みたいなもんじゃないかと思ってるんです。温泉や観光地って事前にチケット取り、飛行機を予約して行く【ハレ】の場じゃないですか。でも足湯ってふらっと行ってタダで入れるところが多いでしょ。それで温まったら出てきちゃって構わない。そういうところが寄席に近いかなと。ちょっと温まってね、いい気分になって帰れる。それが寄席の良さだと思います。

 


――最後に一之輔さん、ミモレ読者に『まくらの森の満開の下』の宣伝をお願いします! 

一之輔:まあ、どこから読んでも楽しめると思いますので、ぜひ読んでいただけると嬉しいですね。あと、買うとキレイになれる! 見る見る痩せて肌ツヤがよくなる! あと、膝に効きます(笑)! 


――謹んで、そのお言葉をそのまま書かせていただきます……(笑)。

一之輔:ヘラヘラ笑ってましたって書いておいてください。でもまあ、買って悪いことはないと思います。一家に一冊……は多いかな? 町内に一冊でもいいです(笑)。コロナの頃のことなんかも書いてあります。そのとき噺家が、僕が、どんなことを考えていたかなども知ってもらえるといいかなと思います!


一之輔さんのいる“足湯”なら、疲れた心身をちょっとだけほぐすのに行ってみたいと思った人も多いはず。一之輔さんは独演会も多数行う中、ほぼ毎日どこかの寄席に出演されています。何と言っても、事前にチケットを押さえる必要がほぼなく、思い付いたときに入れるのが寄席の魅力ですから、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか? 『まくらの森の満開の下』は一之輔さんの独演会などで販売していることもあるそう。都内の書店などではサイン本を取り扱っているところもあるので、情報は一之輔さんのTwitterで!

春風亭一之輔 公式ツイッター
@ichinosuke111


インタビュー前編
落語家・春風亭一之輔さんが誘う「落語」という魅惑の世界。『まくらの森の満開の下』>>

<新刊紹介>
『まくらの森の満開の下』
朝日新聞出版
1月20日発売 ¥1750

今のりにのっている落語家・春風亭一之輔が、落語のイントロ「まくら」を噺(はな)すようにつづったエッセイ集の最新版。桂宮治が「笑点」の一員に抜擢された際の気持ちを赤裸々に書いた「新メンバー」、コロナ禍で頻発した落語界の代演について考察した「代役」他、抱腹絶倒の時事ネタエッセイを多数収録。「週刊朝日」連載の単行本化第3弾。


撮影/shitomichi
取材・文/前田美保
構成/坂口彩