室内の納骨堂を選ぶという選択


墓じまいにかかるお金の中には、墓石の撤去代やら出骨作業の費用やら、いろいろとあることがわかってきました。しかも、ただ「お墓を持つのはやめました!」というわけにも行かず、先祖の遺骨をどうするのかなど、考えなければいけないことは盛りだくさんのようです。

都内に住む父親に相談したところ、そこまでお墓に執着がないようで、「自分の代で、東京の近代的な納骨堂に移してもいいかなと思ってる」というのんびりとした答えが返ってきました。ですが父親も80歳。年齢的にいつ何があってもおかしくありません。そこでいざという時に困らないように、墓じまいについて教えていただけますか?

 


墓じまいとは


墓じまいの話は、近頃よく聞く話かもしれません。田舎にある大きなお墓をしまってすぐにお参りができるように納骨堂のようなものを利用したいという方や、親が元気な生前のうちにそろそろ当たりをつけておきたいという方もいらっしゃることでしょう。

跡継ぎがいなくて自分の代で家系が絶えてしまったり、先祖代々のお墓が遠方で維持や管理が大変など、事情はさまざまですが、墓じまいを考えている人は増加しています。

「墓じまい」とは、現在のお墓を撤去し、敷地を更地にして墓地の管理者に返還すること。お墓の中に納骨してあるご遺骨を別の墓地に移したり、永代供養墓地などに移すことは「改葬」と言います。2020年度の全国の改葬件数は、11万7772件との公表もありました。2017年は10万4493件で、このあたりを境に10万件を超え、今でも増加傾向にあります。

費用相場は50~100万円程度


墓じまいの相場はご遺骨の数によっても異なりますが、およそ50~100万円程度と言われています。その内訳は、以下のようになっています。

 

離檀料は、これまでお世話になったお礼として、寺に対してお渡しするものですが、これが膨れ上がると総額が変わってきます。費用の相場は3万~20万円ですが、中には数百万円という高額な金額を請求されてしまうこともあるようです。
 

新しいお墓にはどんなタイプがある?


「ご遺骨は絶対にお墓に入れなければならない」という法律はなく、一般墓地以外にも選択肢はあります。費用や管理が負担であれば、その必要がない方法を選択するのもひとつの案。ご自身と家族の生活スタイルに合わせて、また故人を偲びやすい選択ができることが大切で、供養方法には主に以下の種類があります。

 

墓じまいの改葬としてよく選択されているのが、「納骨堂」または「樹木葬+永代供養」というパターンです。樹木葬は、墓石の代わりにシンボルツリーを植えてその下にご遺骨を埋葬する方法で、霊園などが対応しています。なお、自宅の庭に遺骨を埋めるのは禁じられており、墓地埋葬法違反で罰金を科せられます。

納骨堂は、都心に多い室内型のお墓です。骨壺を納めるロッカー型や仏壇型、タッチパネルやカードキーをかざしてご遺骨が運ばれてくる自動搬送型もあります。

これらの改葬先を選ぶと、継承者がいなくて維持や管理が難しい場合でも、「永代供養」といってお寺や霊園にお墓の管理を一任できます。ただし永代供養といっても半永久的ではなく、一定期間は個別に安置された後、多くの場合が他人の遺骨とまとめて埋葬されます。十三回忌、三十三回忌など、永代供養の期間は改葬先によって異なるので、必ず確認してください。永代供養は、三十三回忌などの区切りを最後に、弔いは終わっていくというイメージです。

お墓を選ぶ際のポイントは、①お墓の種類、②アクセス、③金額の3つです。日本最大級のお墓に関するポータルサイト「いいお墓」を運営する鎌倉新書が行った「お墓の消費者全国実態調査(2022年)」によると、購入したお墓の種類は「樹木葬」が41.5%で3年連続シェア1位。平均購入価格は、一般墓158.7万円、納骨堂83.6万円、樹木葬69.6万円となっています。ご自身やご家族がどこに重きを置くのかによって、おのずと選ぶお墓が見えてくるのではないでしょうか。


墓じまいの進め方


墓じまいには、法律に則った手続きが必要になります。進め方の一例も紹介しておきましょう。

①親族がいる場合は、墓じまいの理由を説明して同意を得る
②墓じまいが決まったら、現在の霊園や寺院に伝えて「埋葬証明書」を発行してもらう
③ご遺骨の受け入れ先を決め、新しい管理者に「受入証明書」を発行してもらう
④現在のお墓がある自治体から「改葬許可申請書」を取り寄せて記入する
⑤閉眼供養、遺骨の取り出し、お墓の解体を行う
⑥現在のお墓がある自治体に「埋葬証明書」「受入証明書」「改葬許可申請書」を提出し、「改葬許可証」を発行してもらう
⑦遺骨を移転先に納骨する

お世話になっていた寺に墓じまいを伝える際、稀にトラブルになるケースがあります。そんな時は、代行業者に仲介してもらうのも1つの手ではないでしょうか。

お墓というのは自分だけの問題ではありません。親が入るお墓はもちろん、今後そのお墓をどうしていくのかなど、親が元気なうちに話しておきたいものです。


写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 


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