――そうか。傷つくことがあるのも自然なら、傷ついたときにどうするかの方が大事なんですね。
それよりなにより、自分に正直でいることが大事。つまり、それが嫌な顔をされるのを引き受けろってことなんですけど。
――それには強さがいりそうです……。
そんな! 自分ができないことを全部強さのせいにするなって言いたいね(笑)。
――すみません。めっちゃ笑ってしまいました(笑)。
自分ができないことは全部自分に強さがないせいだみたいに言うと、自分で自分の首を絞めることになると思うんですよ。強いかどうかより、覚悟の問題だと思います。覚悟には強さがいると言われたら堂々巡りになるんだけど、一度やってみて意外と大丈夫だってことを知るしかないと思う。
フマキラーだって同じように見えて進化し続けている
――個人的に本書を読んで膝を打ったのが、「ちゃんと正しく、ユーモアを持って寛大に生きたい」という言葉。まさに目指すべき大人の理想像だなと思ったのですが、時代によって「正しさ」がどんどん移り変わるからこそ、正しくあるのって難しいなと思います。
「正しさ」は立場によって人それぞれ。だから、私は社会が唱える「正しさ」ではなく、私の思う「正しさ」で行きますねって決めています。そして、それを他人に強要しないようにしたい。自分で自分に正しいことをしていると嘘をつかずに言えるのが理想の状態ですね。
――さっきおっしゃった「自分に正直でいること」ですね。
そうそう。もちろん私だって間違ったことをすることはあるし、それをやめられないときもある。そんなときは、そういう自分にちゃんと刮目する。そして、「おえーっ、自分」となることを恐れずに引き受けるしかないと思うに至りました。
――他人に自分の「正しさ」を強要しないというのは、寛大さにもつながる気がします。でも、年をとるごとに年々寛大でいることに難しさを感じます。
それは私もわかります。だから、少しずつ閉まってくる襖みたいなものを自分で開けていくしかないんですよね。そこでガーンッと閉めちゃったらおしまい。そうならないためにも、頑なにはならないようにしてますね。
――スーさんって変わることを恐れていないですよね。本書を読んでいても、今までのスーさんの文章とは全然違う印象を受けました。
今回は、普段なら「言わんでもわかるだろう」とすっ飛ばすような言葉や、心配いらないよというような言葉まで、一つずつ丁寧に書いていったところはありますね。でもそれも、どこを取り出すかで変わっているように見えるだけで、通底しているものはあまり変わっていないと思います。
ただ、変わらないとダメだとも思いますよ。たとえば世の中の消費財で、発売当初から何一つ変わっていないものってないんじゃないかな。フマキラーだって同じように見えて、フマキラーであり続けるために進化しているでしょ、きっと。私も明らかに考えを改めた部分もありますし、考えが変わったことを口にするのを恐れないようにしています。
――スーさんは芯があるけど柔軟なところが素敵です。
芯は確かにある方だと思う。そしてありがたいことにそう見えるんだとしたら、自分に正直に生きることと、世の中は自分の思い通りになるようにはデザインされていないということを忘れない。この2つを徹底している結果だと思いますよ。
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