ケース④ 理由を説明されないまま、上司に一方的にダメ出しされたら?
事例:
Gさんは、課の先輩であるHさんの指導方法に悩んでいました。
HさんはGさんの5年先輩であり、Gさんを教育する立場にあります。
ところがHさんは、いつも一方的に、
「君の報告書、何あれ?全然使えない」
「もう少しうまくまとめてもらわないと、こっちが困るよ」
と言うだけで、何が悪いのかを具体的に指摘しようとしません。
理由が皆目わからず、訂正のしようもないため、Gさんは困惑するばかりです。
言葉の護身術:「具体的にどこが?」で撃退する
Hさんのように、何が悪いのか理由を示すことなく、一方的に相手を責めるだけの上司は、意外なほど多いです。おわかりのように、Hさんは自分の思い通りにしたいという典型的な「自己中」タイプ。
部下を支配したいという願望も強く、「とにかくダメ」と一方的に批判することで、自分の優位性を主張しようとする「完璧主義者」タイプの傾向もあります。
このタイプは、抽象的かつ感情的な指摘を繰り返すだけで、相手を指導する気もなければ、能力を伸ばしてやろうという気もさらさらありません。
Gさんは悩んだ末に、Hさんの理不尽な指摘に対し、「具体的な指示をしてもらえないか」とお願いをすることにしました。
「全然使えない」とか「これはダメ」といったHさんのダメ出しに対し、
「ご指摘はごもっともです」といったん肯定したうえで、
「具体的にどの部分が使えないと思われたのでしょうか?」
「なぜダメなのか、具体的に理由を教えていただけませんか?」
といったように、お願いをしたのです。
案の定、Hさんは、Gさんの質問に口ごもり、「そんなこと、自分で考えろ!」と言うだけでGさんの質問にまともに回答することはできませんでした。
じつはこの方法は、覚えておくといろいろなケースで応用できるため便利です。相手に「具体的に指示をしてもらえないか」とお願いをすることで、相手の指摘の曖昧さを「暗に批判する」高度なテクニックなのです。言われた相手は、何が悪いのかきちんと理由を説明する必要に迫られます。それができなければ、感情的に嫌がらせをしていたことが明るみになってしまうのです。
ムダに「反応しない」。ムダに「争わない」――これが「言葉の護身術」の極意です。相手と正面からぶつかるのではなく、相手の攻撃を「かわす、受け流す、時に利用する」合理的な方法と言えるでしょう。
『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』
著者:後藤 千絵(ごとう・ちえ) 三笠書房 1540円(税込)
基本スタンスは、ムダに「反応しない」。ムダに「争わない」。カチンとくる一言や、高圧的なもの言い、陰湿な嫌がらせをしてくる「嫌な人」から自分を守る「言葉の護身術」を紹介。職場の人間関係にお悩みの方、必読!
著者プロフィール
後藤 千絵(ごとう・ちえ)さん
弁護士。1967年、京都府生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社、大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道を志す。2006年に旧司法試験に合格。08年に弁護士として荒木法律事務所に勤務した後、17年に独立。スタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所を設立。離婚や相続など、家族の事案を最も得意とし、近年は「モラハラ」対策にも力を入れている。「職場の嫌な人による嫌がらせ行為」に悩む多くの人たちのために、自分を守る「言葉の護身術」を考案。本書はその活動の集大成。
構成/大槻由実子
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