「○○でなきゃダメ」より「こんな自分でよし!」


──庵主さんは『駆け込み寺の庵主さん 心のモヤモヤ「供養」します』で「私、失敗するのが怖くないんです」と書かれていますね(笑)。そうやって、堂々と世の中の思い込みを覆す大人が増えるといいなと思います。

不登校のお子さんに関するお悩みもよくお受けするんですが、お母さんより、おばあちゃんのほうが深刻にとらえていることがけっこうあるんです。「学校に行かないなんて、えらいこっちゃ。必ず将来失敗する」って思い込んでおられるのは、世代的なものもあるかもしれません。

だけど、この世にひとりとして同じ人がいないように、ひとりとして同じテンポ、リズムの人もいない。むしろ、非人間的とも思えるような現代社会のスピードに合わせられる「普通の」人たちのほうが、普通じゃないとも考えられる。だから、こうお伝えするんです。「不登校のお孫さんのほうが、本来の生き物のリズムかもしれないですよ。体は健康そのもの? 上出来、上上出来です! 大らかに見守っていきましょうよ」って。

──そうですね。必死に現代社会のスピードに合わせなくても、ちゃんと健全に生きられる気がします。

先ほどのゴロゴロ亭主にお悩みの方にも通じるんですが、「学校に行けないお孫さんをどうにかしようとする」そのお気持ちこそが苦しさの元凶。ぜひお孫さんを連れて、不徹寺にお茶でも飲みにきてください。「いつ、いかなる時もちゃんとした自分」でなくたって、梅は咲くし、季節は移る。いつかは素敵な風も吹きます。ただ「待つ」だけの時期も、人生には必要な気がするんです。それこそ、自然なリズムで生きることではないでしょうか。

「○○でなきゃ」より「みーんな良し!」──駆け込み寺の庵主さんが考える楽しい生き方とは?_img4
写真:Shutterstock


──今おっしゃった「自然なリズム」で生きることを「ダメな自分」と見なしている人も多いでしょうね。でもそれが生き物本来の生き方であり、決して悪いものではないことに気づけるといいですね。

寺猫の織部と白ちゃんを見てると、本当にそう思います。特に仲良くはないですが、それを、別段苦にする素振りもなく、つかず離れずで暮らしている。時々派手なケンカもするけれど、ふと見ると尻尾の先だけちょんと重ね合っていたりして。猫も人間も、それで十分。

まずは完璧じゃない自分を、まるっと認める。そうすると、思い通りに動いてくれない人のことも「なんだ、仲間やん」って許せる。許し合えれば、生きるのがグッと楽になる。なんでも楽なのが一番ですよ!

 

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『駆け込み寺の庵主さん 心のモヤモヤ「供養」します』
著者:松山照紀 双葉社 1595円(税込)

創建300余年の駆け込み寺・不徹寺で「庵主さん」と親しまれる第25代住職・松山照紀さんが、不安、嫉妬、憎しみ、怒りなど長年居座るやっかいな心の粗大ゴミの手放し方を丁寧に指南します。また松山さんの波乱万丈な半生も記されており、年齢に関係なくチャレンジを続けるその姿に勇気をもらえるでしょう。


取材・文/さくま健太

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