「心のモヤモヤ」をスルリとほどく大人気の尼さん


不安、嫉妬、憎しみ、怒りーーネガティブな感情をコントロールするための指南書は世に数多くあれど、「どれを読んでも、いまひとつしっくりこない」という方も多いのではないでしょうか。やっぱり誰かにモヤモヤした心の内をじっくり聞いてもらいたい。そして、できれば背中を押してほしい。そんな切実な願いに丁寧に応えてくれる尼さんがいます。

兵庫県姫路市で300年以上続く尼僧庵・不徹寺の第25代住職・松山照紀さん、60歳。「女性のための駆け込み寺」を目指す松山さんは、身心ともに追い詰められて辿り着く相談者さんのお悩みに真摯に耳を傾け続けてきました。

訪れる女性は10代から80代まで幅広く、時には人生に疲れた男性の姿も。「庵主さん」と呼ばれて親しまれる松山さんは、大らかな笑顔で受け入れ、何時間でも傾聴します。素敵な茶室で美味しいお茶を飲み、2匹の寺猫「織部」と「白ちゃん」とたわむれるうちに、ぽつり、ぽつりとつらい気持ちを打ち明ける相談者さん。やがて帰る頃には嘘のように元気になる方も多いとか。

さらに毎日、無料の電話相談も受け付けているというエネルギッシュな庵主さんですが、カラッと明るいお人柄からは想像がつかぬほど、半生は波乱万丈。20歳で妊娠し、学生結婚。27歳で離婚した後に看護師の勉強を始め、33歳で大病を患い臨死体験。48歳で看護師から尼僧になったという、まさに「女のけもの道」(本人談)を歩んでこられたお方なのです。

今回は、初の著書『駆け込み寺の庵主さん 心のモヤモヤ「供養」します』(双葉社)を出版されたご本人へのインタビューを敢行。この世知辛い時代に無料の電話相談に取り組み、たくさんのお悩みに向き合うパワーの源に迫りました。

撮影/花井知之

松山照紀(まつやま しょうき)さん
臨済宗妙心寺派・松壽山不徹寺住職。1962年、福岡県筑紫野市生まれ。霊峰・宝満山の麓でのびのび育つ。大学生だった20歳の時、予期せぬ妊娠。同級生と学生結婚するも、離婚してシングルマザーに。手に職をつけるべく看護師を志す。マザー・テレサの慈善施設でのボランティア、みずからの大病を経て、ナースとして終末期を見つめる。医療の限界や迷いを感じていた37歳の時、座禅と出会い、48歳で出家。厳しい尼僧修行を経て、2016年より、兵庫県姫路の地で創建300余年・代々女性によって受け継がれる不徹寺の庵主となる。「すべての女性の駆け込み寺」を目指して日夜、無料の電話相談や疲れた心がホッと和める懐石料理・お香教室を監修するなど、さまざまなイベントに取り組んでいる。