いろんなアイデンティティを持っている人たちがいるから面白い


坂口:高校卒業後はファッションの専門学校に入学したんです。当時アルバイトしていた居酒屋の規定で、髪が耳にかかっちゃだめで、それを守るためにカットしたら偶然おかっぱになったんです。そこからオーディションに受かるようになって「なんかいいね、面白いね」って言ってくれるような人と出会って、これはこれで意外と自分の持ち味なんじゃないかと思うようになったんです。

この容姿で生まれてきたから、この性格とか思想が養われてきたんだ。だからそれを活かして、自分の考えとか思いを大切にして「これが私です」っていう感じで生きていこう。それが一番自分にとって心も体も健康だ。そんなマインドになったんです。最近は今の自分が一番好きですね。

 

ーー人と違うことこそが宝物だと気づいたのは、個性を生かすような俳優として活躍するようになってからですか?

 

坂口:そうですね。「あんな顔に生まれたかった」とか、そういう憧れや理想が強くあったんです。それなのに鏡を見たら全く違う現実がありました。でも、その自分も、誰かから見たら、もしかしたら羨ましいものかもしれない。「それ面白いね、美しいね」とか言われるような何かを、おそらく誰もが持っていると思うんですよね。美的センスもみんな違うし、何が心地いいかとか、好きかっていうのは全然違う。

みんながみんなカチッと美しい人たちばっかりだったら、それはそれでつまらない。眉目秀麗な人たちばっかりじゃなくて、僕みたいに、いろんなアイデンティティを持っている人たちがいるから、世界って面白い。見た目も性格も、いろんな人が適材適所でいるから、いろんな「かわいい」が存在する。このキャラクターでよかった、こういう人が必要だよねって僕は思います。