猫と一緒に暮らす人にとっては、家族のように大事にしている猫と1日でも長く暮らせるのは幸せなことです。その一方で、猫も飼い主も年齢を重ねていくことになります。

それでも、猫とともに暮らしてきた時間はかけがえのないものですし、シニアになった猫だからこそ、愛着もひとしおです。そこでミモレでは、シニア猫(ここでは10歳以上と定義)と暮らす人たちのお話に耳を傾けてみようと思っています。

今回登場するのは、雑誌などで活躍するフォトグラファー・山口明さんの愛猫パンチョ(14)。前髪ぱっつんの白黒猫で、悲しげで情けない表情が特徴です。9歳の時にananの猫特集号で表紙を飾ったことで注目が集まり、今やインスタグラムアカウント(@pancho0002)はフォロワー10万人。弟分のガバチョ(7)と一緒に穏やかに暮らしています。

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大人になるにつれ表情豊かな猫さんになってきました。2016年頃、アンニュイな7歳(写真:山口明さん、以下同)
<飼い主プロフィール>
山口明さん(45)
フォトグラファー。京都府舞鶴市生まれ。ビジュアルアーツ専門学校 大阪を卒業し、スタジオ勤務を経てフリーランスに。雑誌などで活躍している。ずっと猫を飼いたかったので、30歳の時、フリーランスとして独立して結婚し、猫が飼える家に引っ越したタイミングでパンチョを譲り受ける。7年後、保護猫サイトでガバチョと出会う。
<同居猫プロフィール>
パンチョ(14)
mixiの「里親募集」で山口さんと出会ったオス猫。ヅラ頭の白黒猫。当時は生後約4ヶ月でガリガリ。でも好奇心旺盛で元気いっぱいの子猫で、あれよあれよと約9kgの巨猫へと成長(現在は約7kg)。9歳の時にananの猫特集号で表紙を飾る。今やフォロワー10万人のインスタグラマー猫に。

ガバチョ(7)背中に黒いハートマークがある白黒猫。パンチョ7歳の時に、「ガールフレンドを探そう」ということになり、保護猫サイトで里親募集中だったところを、山口家にトライアルで迎え入れられる。サイトでは「メス」と書いてあったのに、実はオス。トライアル中に愛着がわき、そのまま迎え入れられる。
 

パンチョは僕にとって“ファーストキャット”。フリーランスになる前はほぼ連日終電帰りで、猫を飼えるような状況ではありませんでした。ペット可の家に引っ越し、結婚したので迎え入れることにしたんです。パンチョは元気いっぱいでとにかく走り回っていました。誤食でお尻から糸がでてきて動物病院に連れていったこともありましたし、お湯を張ったバスタブに落ちたこともありました。フタをしていたのですが、パンチョは蛇口から出る水を飲むのが好きで、フタに乗って水を飲もうとしたら落ちてしまったんです。慌てて助けたのですが、パンチョに本気噛みされて、僕の手に穴があきました。

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2009年8月。引き取った直後のパンチョ。約4ヶ月でガリガリ。翌月に去勢手術をしたら、獣医師に「この子は大きくなるよ」と言われました。

特に病気をすることもなく、元気なのですが、一度血液検査で腎臓の数値が許容値ギリギリだったことがあって、その時から無添加の高級キャットフードに切り替えました。我が家で一番エンゲル係数が高いのはパンチョです。

パンチョが9歳の時、仕事をしているananの編集者から、「1冊まるごと猫特集を予定していて、その中で、『カメラマンの猫』というページを作るので、山口さんの猫の写真を送ってほしい」と言われました。それで2枚の写真を送ったら、1枚が表紙になりました。この特集号、すごく売れたようです。パンチョは意外にも遅咲きデビューなんです。

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ananの表紙を飾ったのは9歳の時。表紙とツーショット

フォトグラファーとしてインスタグラムのアカウントを持っていましたが、そこには、たまに旅先の記録を投稿するなどして、普通にやっていました。でもパンチョをアップするようになると、パンチョ以外の写真を投稿した時に、「そんなのいいから猫の写真をアップして!」とコメントがつくことがありました。フォトグラファーとしてはインスタ写真を頑張るのは気恥ずかしいところはあるのですが、今はパンチョのアカウントを独立させて、そこで猫の写真を投稿しています。

パンチョといえば、ヅラ頭に寂しそうな困り顔が特徴ですが、実は曇りなきまなこの、単なる美猫なんです! ちょっと垂れ目でまつ毛が長いので、うつむき加減であのような表情に見えます。でも、あの表情がいいので狙って撮っています。

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現在14歳。渋さが増してかっこいいです!

ちゃんと写真を撮ろうとしたらやっぱり逃げます。テーブルに布を敷いて、そこに座らせて、逃げたらまた連れ戻して……、ということを数回繰り返していると、パンチョの心が折れ、「もう早く終わらせて」というかのような虚無感を漂わせます。その時の表情が狙い目です。フォトグラファーとしてはいい写真が撮れてうれしいのですが、撮影後は嫌われてしまうので、飼い主としては寂しい限りです。

 
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