物理的な苦労よりも、精神的な解放感が勝る


「実は家を出る前は、夫や義母に反対されるだけでなく、知人友人にも『本当に大丈夫なの?』とかなり心配されました。おそらく1人では不安な母親だと思われていただろうし、私自身もすごく不安はあり、さらに大変な生活になることは覚悟していました。

賃貸契約をするときも何度も尻込みしそうになったし、『私1人じゃ息子2人を育てるのはきっと無理だ』とネガティブになることもありました。でも、そんな気持ちに引きずられないように、半ば勢いで家を出ました」

小百合さんいわく、このとき彼女は万全な状態とは言えず、2人の子連れでの別居としては見切り発車な部分もあったよう。けれど一度行動してしまえば、あとは突き進むしかありません。

「物理的な面ではたしかに大変なことはあります。私の収入では住むマンションのグレードも下がるので、例えばエレベーターがなかったりだとか、いろいろ。

でもそんなことよりも、夫と離れたという解放感は想像以上に大きくて。罵声を浴びせられることのない自由な生活でストレスが激減して心に余裕ができました。経済状況については、焦った夫が養育費を出すということで10万円もらえることになったので、これは家賃に充てていて、同居していた頃よりはマシになりました。生活はものすごく楽になったんです」

「パパにぶたれませんように」と短冊に願った息子のため... 10代から専業主婦の2児の母がモラハラ夫から逃げ、自立するまで_img0
 

「子どもたちは相変わらずパパが好きで、別居当初は『パパに会いたい』と寂しがることもありました。でも2人ともそれなりの年齢だったので、家を出た理由は正直に伝えました。『ママはパパの暴力を許せなかったし、いつも怒られたり無視されたりする生活も嫌だったんだよ』と」

ちなみに、別居中の夫婦は本来「婚姻費用」を請求できるので、正式な手続きを踏めば、小百合さんの夫は高収入であるため10万円以上の額を受け取れる可能性があります。が、夫とやりとりをするという精神的苦痛を天秤にかけて、あえて小百合さんはそうした行動は起こしていないようです。

「別居以来、月に2回ほど家族で会うようにしています。出かけたり外食へ行くのですが、同居中は4人で外に出ることなんてほとんどなかったので、子どもたちは『今の方がパパと遊べるね』なんて嬉しそうですが……。

 

実は最近、夫に暴力を振るわれがちだった次男が、今度は学校でお友達を叩くことが度々あるんです。彼の中では父親がお手本になっていて、何かうまくいかないとき、解決手段が暴力になってしまうんです。児童心理士さんのもとに通い『叩かなくても解決できる方法』を学んでいますが、こんな息子の様子を見ていても、やはり離れてよかったと思います」

そして離婚については、夫の反対によりなかなか進みが悪いそう。小百合さんは今年中には夫に決断をしてほしいそうですが、彼は戻りたいの一点張りだと言います。

「子どもと私にとって、もう夫といるメリットはゼロ。同居には絶対に応じませんし、離婚の意思は固いです。20代をほとんど夫の支配下で過ごしたので、30代はこのまま平和な生活を続けられるよう頑張るつもりです。

私は子どもたちがすごく好きで。これまでかわいそうな思いをさせてしまったり、私も余裕がなかったことが多いので……まだ課題はたくさんありますが、しっかり子どもと向き合って過ごしたいと思います」

本格的に離婚の手続きとなるとまた夫の様子が心配ですが、おそらく今の小百合さんであれば、きっと夫の攻撃や引き留めには動じず乗り越えられるように感じます。

願わくば、養育費や財産分与などはしっかりと適正な額をもらってほしいと思ってしまいますが……!

10代で上京し、その数ヶ月後には妊娠・結婚となり、社会に出ることなく専業主婦になった小百合さん。そんな彼女がゼロからキャリアを築き、別居に至るまでの気力と努力、行動力には、母として女性として学ぶべきことがたくさんありました。

小百合さんとお子さんたちが平和な時間を過ごせることを、心から祈っています!

写真/Shutterstock
取材・文・構成/山本理沙
 

 

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