平穏な日常に潜んでいる、ちょっとだけ「怖い話」。
そっと耳を傾けてみましょう……。

 

第44話 どこで消えた?

 

「ねえねえ、莉子のOJT担当、噂の新人なんだって? 白羽の矢が立ったねえ」

早朝5時、空港の更衣室で制服に着替えていると、休暇明けの同期、絵美が妙にウキウキした様子で寄ってきた。勤続8年。最初は50人いた同期も、今では私と絵美だけ。空港のグランドスタッフがいかに厳しいかわかるというもの。

私たちはもはや親友であり戦友。現場では数人の大先輩と、大量に入ってきて大量に辞めていく後輩に挟まれ、苦労の多い中間層として頑張っている。

「そうなのよ。久々にOJT教官になったと思ったら、手ごわい子が来たのよ。今日で14日目なんだけど、ちょっと心配なことがあってねー」

「合格にするかどうか迷ってるってこと? 松本さんだっけ、めっちゃ可愛いし、愛想は悪くないけどねえ」

「そうなんだけど、致命的な問題があるのよ」

私がため息をつきながらメイクの仕上げにパウダーをはたいてリップを塗ると、絵美が嬉しそうに身を乗り出してきた。

「え、何? 何?」

「……この仕事がちっとも好きじゃないってこと。松本さん、ゴリゴリのCA志望なのよ」