本当に目的はお金?執念でお金を請求し続ける夫
実際に紗奈さんは、夫の要求通りにしばらく家賃や生活費を払い、過去の婚姻費用とされる150万円も支払ったというから驚きます。
「夫の執念みたいなものが怖くて、とにかく彼の言うことに従い、離れられるなら離れたかったんです。でも、夫の要求は止みませんでした。彼の家に置いてある私の『家具の家賃』や、昔の結婚費用も請求されるようになったんです。
結婚式費用、婚約指輪、結婚指輪、住んでいた家の礼金に家具代……彼は過去に遡り、ずっと粗探しをしている状態でした。契約不履行、一方的な約束破棄だから責任をとれというのが彼の言い分で、私も多少償う気持ちはありましたが、もうキリがありませんでした」
こうなってしまっては、元の結婚生活に戻ることは絶対にない。夫の対応に疲れた紗奈さんは離婚したいと何度も伝えましたが、当然のようにやはり猛反対。
「僕は絶対に離婚しない」「紗奈は結婚した責任を取るべきだ」「君は一時的に気が迷っているだけ、本来僕たちは何の問題のない夫婦だ」と主張され続け、2人の話し合いは平行線でした。
「そんな状態が数ヶ月続き、仕方がなく弁護士を立てて離婚調停を申し立てました。これまでごく普通に生きていた自分が、こんな状況になるなんて思ってもいませんでした」
弁護士を立てて離婚調停をすれば、きっと離婚は成立する。当初はそう思っていた紗奈さんでしたが、再び大変な状況が待っていました。
「離婚調停は裁判所に介入してもらい、夫と顔を合わせることはなくなりますが、あくまで当事者の話し合いで解決するというものです。夫は弁護士は立てませんでしたが、ひたすら離婚を拒み続け、だいぶ長引いた末に、私が約1000万円のお金を払えば離婚に応じると言い出しました」
ちなみに、離婚調停が長引く多くの理由の財産分与。
これは結婚後に築いた財産を離婚時に夫婦で平等に分けるというものですが、紗奈さん夫婦の場合、資産や収入が多いのは夫なので、本来は紗奈さんが希望すればある程度の金額を請求することができます。
ですが夫は逆に、慰謝料や借金として紗奈さんに高額な支払いを要求したのです。
「離婚したいのは私だし、お金が絡めばそれだけ調停は長引くのはわかっていたので、もちろん私は財産分与は求めませんでした。でも、かと言ってなぜ私が1000万円も払わなくてはならないのか……。さすがに払える額でもないし、払う意味も納得できず。
ですが離婚できるならと、なんとか200万円までなら払えると交渉しましたが、やはりダメで。また、彼のストーカー的行為は法的な離婚理由として弱く……調停は1年半近くも続きましたが、結局不成立となってしまいました。
資産があり、収入も高い夫が妻に何も支払わず、むしろ200万円支払われて離婚できるケースは夫にとってかなり好条件だと裁判官ですらぽろっと口にしたようですが、夫は一貫して聞く耳持たずでした」
そして「絶対に離婚しない」という意思表明をしたまま、調停後、なんと夫はプツリと音信不通となってしまったのです。
Comment