3分の1がパワハラ経験者!?
2020年にパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が施行されたにも関わらず、残念ながら日本には未だに罰則の規定はありません。
美沙さんのようなケースに限らず、近年パワハラやセクハラなど、職場でのハラスメントが引き起こす深刻な影響が問題となっています。全国の労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は年々増加しており、2021年は8万6034件と、この10年で倍近く増加しました。厚生労働省の調査では、31.4%、実に回答者の3分の1が「パワハラを受けたことがある」という驚きの数字が出たのです。
「これはパワハラ?」と思っても、よくあることと流してしまう人、逆に深刻になる人もいますし、加害者側もほんの冗談のつもりで言っただけ、期待から出た言動など、感覚の違いも見られます。
筆者の職場にも、「まさか自分が休職するとは思わなかった」と復帰後に語る人もいるくらいで、いつ誰が被害者になるかわかりません。そこで今回は、自分を守るためにも、あらかじめ利用できる制度やサポートを紹介します。
ハラスメントは、もともと嫌がらせやいじめを意味する言葉でした。ところが今では、人種や性別、宗教、身体的特徴など、さまざまな要因をもとに相手を傷つける言動を指すようになり、○○○ハラスメントという言葉が毎年のように生まれています。ハラスメントはただの嫌がらせに留まらず、人権を侵害する行為として捉えられます。
会社で起こりやすいハラスメントには、以下のようなものがあります。
自分がハラスメントを受けているのでは、と感じたら勤務先の相談機関を確認してください。匿名で相談できるハラスメント窓口があれば利用しても良いでしょう。アドバイスや情報提供を受けることができます。
社内で相談するのに抵抗がある場合は、以下の窓口を活用してみてください。
わたし、渋澤も会社員として勤務もしていますが、希望退職者募集の時期はパワハラに近い扱いをされたような気がします。おそらく相性が悪かったのですが、職場に自分の感情を持ち込むとトラブルになりがちなので、本当に信頼できる一部を除いては仕事上の付き合いとして割り切りました。
「嫌なことがあったら逃げればいい」と言うのは簡単ですが、それができないから悩むのだと思います。自身を守るためにも、いくつかの顔を持って逃げ道を作っておくのも大切だと私は思っています。
美沙さんは、同期の方のことを心配して心療内科の受診を勧めました。ただ、心療内科に馴染みがない場合は、どこの病院に診てもらうべきか探すのに困るケースも。そんなときは、精神保健福祉センターに相談してみてください。
精神保健福祉センターは心の病気について幅広く相談できる支援機関で、病院を紹介して欲しい旨を伝えるとアドバイスをもらうことができます。所在地はこちらのサイトで検索できます。
心療内科に定期的に通院したり休職することが決まったら、医療費やお給料といった金銭面が心配になるのではないでしょうか。そこで活用できる制度もご紹介しておきます。
② 傷病手当金病気やケガで仕事を休み、会社から給与が支払われない場合に決まった金額が支給される制度。連続して3日間欠勤すると、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。金額は、欠勤1日につき給与を日割りにした金額の3分の2。ただし、休んだ期間について事業主から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を受けた場合は支給されません。
③ 失業手当現在の勤務先で働き続けることが困難だと感じたら、転職するのも1つの方法です。失業手当は、雇用保険に一定期間加入していた人が退職し、次の仕事が決まるまで一定の金額を受け取れる制度。利用したことがある方も多いのではないでしょうか。原則90~360日の間、定期的に受け取ることができ、年齢、雇用保険の加入期間、退職理由によって金額や受給期間、受取開始時期が異なります。
④ 職場復帰支援プログラム職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラム。決まった時間に施設へ通うことが、会社へ通勤することを想定した訓練となり、こちらは医療機関で受けることもできます。医療機関で行っていない場合は、就労移行支援事業所や障害者職業センターを利用する人もいます。
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子
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