「介護士はスーパーヒーローみたいな仕事だ」だと思っています
――介護とは「できないところをサポートして、できるところを一緒に伸ばしていく」という関係性である、と。
はたつんさん:私はよく「介護士はスーパーヒーローみたいな仕事だ」だと思っているんです。助けを求める(ことが多い)人がいれば、いつでも助けに行けるヒーローで、ありがとうって言われることも多いし、相手が笑顔でいてくれるのが嬉しい、スーパーヒーローなんです。
――確かに! まさにヒーローですね。
介護で、介護士も、利用者さんのご家族も「あると助かるし便利」なアイテムはありますか。
はたつんさん:ズバリ「SNS」ですね! 脱がせやすいズボンとか、靴下を履かせやすい補助道具などいろんな介護に関わる情報が得られるのがSNSです。介護というと寝たきりの方だけではなく症状も人それぞれなので、正直必要なものも人によって違うのですが、それらの必要な情報を得られるのがSNSです。
情報だけでなく、介護をする日々のモチベーションを保ったり、介護士の方や自宅で介護をされている方が悩みや本音を書けている心の居場所にもなります。なので、ポジティブなSNSを見ることをおすすめします。
――ポジティブなものというとはたつんさんのチャンネルもそうだと思うのですが、他に、はたつんさんがおすすめするSNSはありますか。
はたつんさん:いろんなSNSがありますが、Instagramがおすすめです。情報量も多いですし、Instagramで発信している介護系の方って丁寧に投稿を作られている方が多いんです。
私みたいな介護士だと、介護に携わる日々のメンタルを強化するタイプの人だったり、国の介護制度や福祉用具について発信している方などがいらっしゃったりします。また、ご家族の介護を赤裸々に発信していたり、介護は介護でも、高齢者介護でなく、障害のあるお子さんの介護をされている方もいたり本当にいろいろな方がいるので、Instagramで検索して、フォローしてみるのはどうでしょうか。
今は投稿だけでなく、ライブ配信をされる方も増えてきたので、そこで気軽に「うちのお母さんはこうなんです」とか「私は介護の悩みがあるんです」と本音を話せたり、相談できます。私のところにもたくさんそういったコメントが来ます。
――ライブ配信だとリアルタイムでも相談したり話せるからいいですよね。まさに心の居場所になる感じですね。
はたつんさん:介護について情報発信している人とつながることは、自分1人で抱えている悩みが実はみんなも同じ悩みだったというのを知るきっかけになるんです。一人じゃないんだって皆さん思われるみたいで。私もそうですし、それは心の居場所につながるのかなと思いますね。
ご家族の介護をする人へ。どうか一人で抱え込まないで、頼ってほしい
――「こう考えると介護の現場で双方(介護する側、家族含めされる側)ハッピーだよ」という考え方、スタンスがあれば教えてください。
はたつんさん:「介護だから」「高齢者だから」という以前に、年齢関係なく、「自分も相手も同じ一人の人間だ」と思うことです。
たとえばご飯を食べる時に、自分が苦手なおかずが出てきたら「ちょっと食べたくないな」って思ったり、眠たい時に「お風呂に今すぐ入って」って言われたら「めんどくさいな」って思うのと同じように、介護される側も「残したら悪いかな」という思いから「食べたくないわ」って言ったり、裸を見られるのが恥ずかしいから「今日はお風呂はいいわ」って入浴を拒否するとか、必ず理由があると思うんです。
介護をしていると、どうしても心に余裕がなくなってしまう日が必ず来ると思うんです。でも、そんな時に、「相手も自分と同じ一人の人間なんだ」という考えを忘れないことが、関係が崩れない方法の一つだと私は思います。
――「介護される人側の気持ち」を語る動画は、まさに「相手も自分と同じ一人の人間なんだ」という視点を思い出させるものですよね。
はたつんさん:そうなんです。「やってあげている」って思って介護をしていると、感謝やお礼の言葉などがなかった時、ちょっとしんどくなっちゃったり「なんでこんなことをしているんだろう」って感じてしまうと思うんです。そんな時、たとえば親の介護だったら、自分が子どもの頃に親にしてもらったことを思い出してみてほしいんです。相手のことを思いやれるかどうかがすごく大事だと思いますね。
――ミモレ世代に向けて介護士側からのメッセージとか、あとはアドバイスが他にあればいただきたいです。
はたつんさん:介護の生活というのは、大好きな祖父、祖母、妻、夫、親、子供、恋人に介護が必要になって始まるものなのだと思います。その介護を通して「大好きなお母さんだったのに、嫌いになりそうなんです。助けてください」って泣きながらすがる思いで施設に来てくださったご家族様を何人も見てきました。それぐらい介護って一人では抱えられない大変さがあると思います。体力はもちろん、精神的にも。
私たち介護士は、ご利用者様の笑顔がご家族の笑顔にもつながっていると信じて、目の前の方と日々向き合っています。なので、どうか一人で抱え込まないでください。頼ってください、と強く言いたいです。
「これぐらい自分1人でやらなきゃ」「自分のお母さんだから私が面倒見なきゃ」って一人で抱え込んでしまうと、いつの間にか自分の時間が取れなくなってしまいます。自分を大切にしないと、家族のことも大切にできないと思うんです。
介護施設に預けるのはなんだか不安、っていう方もいらっしゃると思うんですけれど、「家族を預けてみて、自分の時間ができたので久しぶりに美容院に行ったら、嬉しくて嬉しくて涙が出ました」というご家族のお話を聞くと、頼るところは信頼して頼ってほしいな、あなたは一人じゃないですよ、と皆さんに伝えたいです。
――まさにスーパーヒーローって感じがします。
はたつんさん:私たち介護士は、目の前にいるご利用者さまのことを大事に思ってるご家族のことも救いたいんです。救いたいって言ったら大袈裟ですけれど、笑顔になってほしいな、と思っています。
あと最近だと、ご家族の介護が必要になって、介護という世界に初めて入ってきて、初任者研修という資格を取りに来られる方が増えてきたんです。初任者研修というのは、要介護者の立ち上がらせ方や食事の仕方など介護の基礎を学べる資格なんですけれど、学んでいるうちになんだか楽しくなっちゃって、介護の業界に転職したという40代50代の方が、男女問わず増えていますね。
転職してきた方々から、「誰かに必要とされることが、すごく生き甲斐になりました」という声や、「デイサービスのレクリエーションで、歌を歌ったり工作やおやつを作ったりする時に、前職の経験が活かされました」とか「新しい第二の人生を楽しんでいます」といった声を聞くとすごく嬉しいです。仲間が増えた気がして。
介護士をやってみるのは年齢的に不安に思う方もいらっしゃると思うんですけれど、人対人のお仕事なので、むしろ人生経験がある方が、それらを生かせていいんです。介護でもいろんな施設形態があって、訪問介護だったら料理をするという仕事内容があったりするので、ミモレ世代の方のセカンドキャリアとして、介護士を選択肢の一つにしてみるのもおすすめです!
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はたつんさんのYouTubeチャンネルには「元気足りてるゥ?」と書かれているのですが、その言葉通りに明るく、話していると元気をもらえるはたつんさん。「介護士はスーパーヒーローだ」という名言と、ご利用者さまに向けられる優しさと思いやりの心が忘れられないインタビューでした。
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次回の「SNSで見つけた『バズり人』さん」もお楽しみに!
構成・文/大槻由実子
編集/坂口彩
前回記事「「関東で雪」だと都内では降らない!?天気予報の「よくある」を打ち破る「アバンギャルド河津」さん」>>
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