エンタメも社会派も大好き。人間を深く理解しようと臨むのは同じだと思うから

――野田作品もそうですが、近年の長澤さんは、映画『MOTHER マザー』『ロストケア』や連続ドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』、Netflix映画『パレード』など、人間とは、生きるとは何かを考えさせられるような作品に多く出演されています。そういう作品を自ら選んでいるのか、もしくは、やってみて何か気づくことはありますか。

長澤:ご覧になる側からしたら、エンタメから社会派まで、いろいろなジャンルの作品を選べるといいですよね。必ずしも深掘りしたからいいとも限らないですし、今日はさっぱりしたものを見たいときもあるでしょうし。さっぱりしているのにすごく深いというものが多くの人が求める理想かもしれない。そんなことも思いますが、私が好んで人間を深く識る作品を意識的に選んでいるかと問われたら、そういうわけでもないんです。人間が多面的であるということはデフォルトであり、深く人間を理解しようとすればするほど、多面性がどんどん浮き彫りになっていくものだと思うんです。

 

長澤:人間を深く理解したい気持ちが、私に限ったことではなく、多くの人たちのなかで強くなっているのかもしれないですよね。私ももちろん、人間の精神的な部分に触れてより深く向き合いたいと思わせてくれるような作品は好きです。その一方で、誰もがわかりやすい、楽しいエンターテインメントも大好きです。そして、社会性のある作品であろうと、エンターテイメントであろうと、演じる役を深く掘っていくことは結果的には同じ作業だと思っていて、俳優として役を演じる上では、ジャンルは意識していないんです。

私は、作品のために、作家や監督が作りたい作品を成立させるために存在している立場に居たい。いろいろな役を演じられるスキルや感性を持って芝居に臨むだけなんです。ただ、いただいた作品や役に対しては、私が一番知っている人になりたい。私がこの人物を一番理解していると思えたら、いい芝居ができる気がしています。

――役を一番理解するということはとても大変な作業でしょうね。

長澤:先輩方はそれをさらりとやっているように見えます。それがすごいと思います。作品の中での役割もありますし、その役に対しての理解だけでも成り立たなくて、共演者との化学反応で変化していくものです。お芝居というものは、その場にいる人達と一緒に作り上げていくっていうことが大前提であり、そこに対してちゃんと情熱を持って取り組めたらいいなといつも思っています。

――参考にしている先輩の俳優などはいますか。

長澤:やる作品によって、参考にさせていただくお芝居も違うので、引き出しを増やすためにも、いい作品をたくさん見ることで、収穫があると思いますので、できるだけ映画や舞台を観るようにしています。友達の舞台を見に行くだけでも、刺激をもらえますし、良いところは学びたいと思っています。

――社会性のある作品と関わると、自分の考えも整理されたり深まったりして、自分の意見を表明したくなったりはしませんか。

長澤:社会がもっと寛容になっていったら、誰もが当たり前のように自分の意見を言えるようになるだろうとは思います。例えば、海外の俳優は政治の話をふつうにしていますが、日本では政治的な発言をすることは勇気が要る。なぜ違うのだろうと不思議に思うことがあります。政治に限ったことではなく、あらゆる価値観の変化がいま問われています。気づけば、社会を形作っていく大人の世代に、私自身がさしかかっていて。生きやすい世の中を作ることは他人事ではないと自覚しないといけないと感じています。
 

 
 
 

<INFORMATION>
NODA・MAP 第27回公演
『正三⾓関係』

 

作・演出:野⽥秀樹
<CAST>
松本潤 ⻑澤まさみ 永⼭瑛太
村岡希美 池⾕のぶえ ⼩松和重
野⽥秀樹 ⽵中直⼈ ほか

【公演⽇程】
★東京公演・北九州公演、6月23日(日)正午チケット一般発売
東京公演:7⽉11⽇(⽊) – 8⽉25⽇(⽇) @東京芸術劇場プレイハウス
北九州公演:9⽉5⽇(⽊) – 9⽉11⽇(⽇) @J:COM北九州芸術劇場 大ホール
★大阪公演、9月1日(日)正午チケット一般発売
⼤阪公演:9⽉19⽇(⽊) – 10⽉10⽇(⽇) @SkyシアターMBS
ロンドン公演:10⽉31⽇(⽊) – 11⽉2⽇(⽇) @サドラーズ・ウェルズ劇場

NODA・MAP公式Instagram @nodamap_official


撮影/田上浩一
取材・文/木俣冬
構成/坂口彩