煌びやかな経歴を持つ商社マンの元婚約者。その闇は…

「私だって、何もない幸せな二人に戻れたらどんなにいいか、何度も何度も考えましたが……でも、やっぱり無理でした。いや、無理という正常な決断を下せた自分を褒めたいです。

あの彼のXの人格も、私のトラウマもきっと消えないから。心と身体が引き裂かれるような思いで彼をブロックして、思い出のものや写真も処分しました。一応、彼もそれなりに反省しているとは思っていたんですが……」

しかしながらその直後、タケルさんは性懲りもなくXで「モテる髪型」や「ラウンジ嬢にウケるファッション」について解説していたのだそうです。それを見た恵那さんは、自分の決意は間違っていなかったとむしろホッとしたそう。

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お話を聞く限り、タケルさんのXでの人格は異常としか思えませんが、それでも彼なりに恵那さんには思い入れがあり、多くの女性と関係を持ちながらも彼女が本命だったのだとは思います。実際、本当に結婚もするつもりでいたのでしょう。

ただ、こうした性癖や別人格のようなものは簡単に消えるものではないですし、仮に結婚していたら、さらなる苦労が恵那さんに降りかかっていたと推測できます。
 

 


「辛すぎる経験でしたが、でも、結婚する前にわかったのはむしろラッキーでした。精神科に勤める友人にこの話をしたところ、直接会ったわけではないからわからないけど、彼は何かしらの疾患を抱えているかもしれないし、そうでなくても不特定多数の女性との性行為にこれほど執着し、平気で嘘をつく性格は病的で危険だと言っていました。まあ、誰が聞いてもそう思いますよね」

ちなみにタケルさんは家柄も良く、中学から大学まで都内の有名私立校をエスカレーター式に進み、総合商社に就職という煌びやかな経歴の持ち主。コミュニケーション能力も高く、非の打ちどころがないように思えましたが、思い返せば、「いつも割り勘」以外にも後から少し気になる点があったそう。

「彼、やたらお母さんを大事にする人だったんです。そういえばお母さんから電話が来て、私とのデートを中断したことも何度かありました。一度だけ電話口で『ママ』と呼んでから慌てて『お母さん』と言い直していたこともありました。

会話によくお母さんが登場したり、受験のときにお母さんが厳しかった話もよくしていたので、少しマザコン気味なのと同時に、母親に抑圧されて育った闇の一面があったのかも。だからああやって女を騙したり征服するのが、彼の発散方法だったのかもしれません。あくまで推測ですが……」

物理的に身体的なダメージはなくても、信頼する人からの裏切りは、ときにそれ以上の力を持って人を攻撃します。

あまりの深い傷のショックがなかなか抜けず、しばらく心身の不調を抱えていた恵那さん。「一歩間違えれば、本当に自殺する可能性もあったかもしれない」とも仰っていました。大袈裟ではなく、タケルさんのSNSは彼女にとって命も奪いかねない凶器だったとも言え、恋愛感情を利用したり、弄ぶ行為は暴力です。

タケルさんに何かしらのトラウマがあるとしたら、彼も被害者と言えるかもしれませんが、とはいえ女性を利用し傷つける理由にはなりません。目先の快楽を求め続けるがゆえに一連の行為をやめられないのだとは思いますが、恐らくタケルさんが本質的に満たされることはなく、彼の行動は惨めなものだと感じます。

恵那さんが辛うじて正気を保ち、立ち直れたのは仕事や友人たちの支えのおかげでした。自分を必要としてくれる職場や患者さんや、またドン底へ突き落とされた恵那さんをなんとか引き揚げようと、あらゆる手を尽くしてそばにいてくれた友人たちへの感謝は今も絶えないそう。

逆にそれがなく、もし一人ぼっちだったとしたら……考えるのも怖いと恵那さんは仰っていました。

どんなに出来事にも必ず二面があり、悪いことばかりではないとは言いますが、恵那さんはタケルさんと結婚する前にこの事実を知ることができたこと、また自分がどれほど周囲の人に愛されているか実感したことは大きな収穫だったそう。

恵那さんのようにパワフルで成功者といえる女性でも、人は誰しも思いも寄らない窮地に陥ることがあります。そんなとき、前を向ける強い心や、健康的な生活を送ることができる環境を日頃から持っておくことはとても大切だと思いました。

今はすっかり立ち直り心身ともに健康、人生を楽しめていると聞き安心しました。恵那さんの今後のさらなるご活躍を心より応援しています。


写真/Shutterstock
取材・文・構成/山本理沙
 

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