黒木さんとは『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(21年)という漫画原作の映画で共演。柄本さんと黒木さんは漫画家夫婦の役でした。妻は、夫が浮気していることを知って、それを漫画に描くことで昇華しようとします。自分自身も自動車教習所の先生といい感じになっていって、漫画のネタにそれも使うのですが、漫画内の虚構なのか、現実なのか、だんだんと曖昧になっていき、漫画を読んだ夫は不安にかられます。

柄本さんが妻の浮気を心配して教習所を張ったりする気の小ささをユーモラスに演じる反面、浮気するときは妙に色っぽいのです。この漫画家夫婦のどこが道長と倫子との関係に似ているかというと、結局妻のほうがうわ手というところです。『光る君へ』では倫子は、道長が明子のほかに誰か思う人がいるらしいことに勘づいて「フフフ」と不敵な笑いを浮かべます。とはいえ第一夫人は強いもの、財産も倫子のほうが多く持っていて、何かあったら道長に協力できるという絶対的な自信に支えられています。


瀧内さんと柄本さんは『火口のふたり』(19年)。これは元恋人同士が再会したら元サヤというか、愛欲(肉欲?)に溺れまくるエロティシズムにあふれた映画で、ふたりが延々濃密な絡み合いをし続けます。それは全然、道長と明子と違うじゃないかという気もしますが、柄本さんと瀧内さんとの間に漂うインモラルな色っぽさが重なるのです。映画では、元恋人の結婚式に出席するため地元に戻ってくると、結婚を前にした彼女の誘いに抗えず……というもので、『光る君へ』の明子はそこまでではないですが、結婚の理由は藤原家への復讐でした。道長には恨みはないがその父を恨み殺そうとするのです。その結果、流産までしてしまうほどの執念。が、やがて、明子は道長に対して従順になっていきます。それには道長に抗えない魅力があるのではないかと思わせます。

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なんだかんだで絶対的な強さのある倫子、危うい情念の明子、クールなソウルメイト・まひろ、道長が結んだ3人の女性との関わりを3本の物語にすると、『知らなくていいコト』『先生、私の隣に座っていただけませんか?』『火口のふたり』になるのではないでしょうか。そして、柄本佑さんはいつも全然違う役柄なのだけれど、女性を引き付けてやまない色っぽさは常に発散し続けています。