結婚式の写真には、決まってキラキラに発光したような新婦と、その子を囲む何人もの同じくらい可愛い女友達が写っている。リアルに考えたことはなかったけれど、実際に結婚式をするかもしれないという目でこのパンフレットを見ると、なんだか気が重くなってくる。
私なんかの結婚式に、何十人も、こんなふうにきてくれるものだろうか?
式場は簡単に「60人から」「100人で」「300人でも大丈夫」と喧伝する。
本当に? 本当にみんな、心からお祝いに来ているの? 主役が平凡で普通な私のときも、そんなふうに皆集まってくれる?
いつだって、主役なんかじゃなかった。ちょっと脇にいて、注目をかわして目立たなくしているのが心地よかった。主役の重責なんてむしろ気が重い。
それにヒロインはいつだって頑張り屋さんで、素直な応援されるようなひとでなくちゃ。そう、お母さんみたいにね。
お母さん。私はお母さんとは違う。とても残念だけど、こんなにも。
過度に期待されるのも、するのも、望まない。お母さんの期待には応えられない。結婚式だって、お母さんにはきっと思い描く「娘の結婚式」のイメージがあるだろう。そして無邪気にそれを期待するはず。でも私はそういう演出を楽しむことはできない。残念だけど、あなたの娘はそういうタイプ。
申し訳なさといらだちから、結婚式のパンフレットを閉じた。裏表紙に、ちいさく「ふたりだけの小さな結婚式をヨーロッパの教会で」と書かれていて、石造りの教会の前でほほ笑む、少し歳のいったカップルの写真が添えられていた。
私はほっとしてそこに付箋をはると、重たい体をおして、ゆっくりとバスルームに向かう。
【後編】どんどん進んでいく結婚の準備。しかし母には気になることがあって……?
イラスト/Semo
編集/山本理沙
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