人間って可愛いものだなと思います

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――本作のようなノワールサスペンスを観ていると、人間の暗部を突きつけられるような気持ちになります。人間はいろんな矛盾や狡さを抱えた生き物ですが、成田さんは人間は好きですか。

僕、若い頃は人混みが苦手で電車に乗るのがあまり得意ではなかったんです。でも、最近は積極的に乗るようになりました。

――それは、どういう心境の変化なのでしょう。

人疲れをしなくなったんです。昔は、大人数がいるところに行くとか、人前に出るとか、そういうことにものすごく神経を使ってしまっていて。でも最近はむしろ楽しめるようになりました。

――若い頃は、感受性の弁が開きやすくて、大勢の人の中にいると不要なものまでキャッチしていたのかもしれないですね。

そう思います。大人になってその受け皿自体も大きくなったことで、いろいろなものを受け止められるようになったのかな。

そう考えると、年々人を好きになっていってるのかも。人間って可愛いものだなと思います。いとおしさを感じるようになりました。

――人としてのキャパが広がってきたんでしょうか。

とにかく人といることが楽しくなりましたね。多少感覚のズレがあったとしても受け入れられるようになったし、みんな一生懸命生きてるんだしなと納得できるようになりました。
 

 


若い頃は、どこか自分が特別でいたかった

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――その分、どんなふうに人を見るようになったんでしょう。

人に対してすごいなと思うことの方が多くなりました。若い頃は、どこか自分が特別でいたい気持ちがあって。他者より自分に意識が向いていた気がします。

ただ、主演をやらせていただくようになって、周りの方の支えなしには築けないものがたくさんあると、より感じるようになりました。周りを大切にすることで、精神的にも健康になると気づいたんです。


――その変化のきっかけはどこにあったのでしょうか。

年をとるごとに、すごい人にいっぱい出会えたんです。器の大きい人に触れることで、自分の角が削れて丸くなるものなんですね、きっと。

そうやって周りを大切にすることが、自分を大切にすることにつながるときもあって。たとえば今僕が怪我をしたら、僕だけじゃなく周りにも迷惑がかかってしまいます。撮影に危険はつきものですから、安全管理ひとつも念入りに行ったり、そういうことはすごく注意深く気をつけるようになりました。

自分のために自分を守るのではなく、みんなのために自分を守ろうとするようになったのは、ここ数年の中での大きな変化かもしれません。
 


『降り積もれ孤独な死よ』

読売テレビ・日本テレビ系
2024年7月7日(日)22時30分スタート

原作:「降り積もれ孤独な死よ」原作/井龍一 漫画/伊藤翔太(講談社「マガジンポケット」連載中)
出演:成田凌 吉川愛 萩原利久 佐藤大樹/山下美月 黒木メイサ/野間口徹 小日向文世
脚本:橋本夏
演出:内藤瑛亮 二宮崇 高杉考宏
制作著作:読売テレビ


撮影/塚田亮平
スタイリング/髙橋美咲(Sadalsuud)
取材・文/横川良明
構成/山崎 恵
 
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