誰かが大切にしているものを、「素敵ね」と言えるように

日本はインフラや設備は整っているのに、障害者が生きづらい理由。共生のために必要なこととは?【三上大進さん】_img0
 

——きっと、「何か力になりたい」と思ってる人の方が多数派だと思うんですけど、現状は車椅子ユーザーの方が移動するときに、例えば「入店拒否されました」とSNSに投稿するだけですごく炎上しますよね。配慮してもらって当たり前だと思うな、という声が多数派だとはとても思えないんですけど、ネットの世界ではそういう声が多いです。

三上:SNSでは障害のある当事者の方が叩かれるケースが目立ちますよね。みんなと変わらないひとりの人間だから、やりたいことを自分は一生懸命頑張る。だからサポートしてほしい、という考え方ももちろんリスペクトされるべきだし、いやいや、こちらの都合もあるんだからいちいち合わせてなんていられないという意見も、当事者としては無下に否定できない。

だた、やっぱり障害のあるなしにかかわらず、多様性を尊重し合えるインクルーシブな共生社会というのが、今日本には求められている課題でもあると思うんです。様々な意見の人がいること自体はよくて、必ずこうしましょう、この人たちはこうされるべきってこともない。様々な意見の人々がどうすれば歩み寄れるか、いろんな人々が生きやすくなるかを考え続けることが、大事なんじゃないかなと思うんですよね。

 

——三上さんにとって、「多様性が実現されている」ってどういう状態だと思いますか

三上:多様性といっても、セクシャリティもそうだし、国籍、宗教も、肌の色、趣味嗜好もそうですけど、様々な多様性がありますよね。多様性って、きっと自分が持って生まれたものとか、自分が大切にしたいもの、自分が好きなもの、そういう自分を象るものの総決算じゃないけど、自分が大切にしているものが表層に出てきた、シンボルの集合体のようなもののような気がするんですよね。

そこに優劣はないし、いい悪いもなくて、自分にしか決められないものだと思うんです。たとえ自分の価値観と違っても、「あなたがそれを大切だと思っていることは素敵ね」っていうふうに言い合えることが、理想的な多様性の認め合いなのかなって思います。

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『ひだりポケットの三日月』
著者:三上大進 講談社 1540円(税込)

「生まれつき、左手指が2本しかありません。右手の5本と合わせて、不恰好ですが、合わせてラッキーセブンの7本指」――。スキンケア美容家の著者が、今までの歩みの中で味わったやりきれない気持ち、自身の変化、そしてNHKパラリンピックのリポーターを務めた経験から得たものなどを素直な言葉で綴る。「自分のことが好きで、自分のことが嫌いな、世界に一人の貴方へ」贈る、美しく優しいエッセー。


撮影/水野昭子
文/ヒオカ
構成/金澤英恵

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