—— ない制度を作る道筋。それは他の企業や団体で働いている方のヒントにもなりそうですね。

ひとりの声では、単なる困りごとになってしまうけれど、複数の声になれば、それは新しい制度を創設する道に通ずるんです。

その後、復職してからの4年間、ランチをしたり、親子で一緒に遊んだりして知り合った似た境遇の同僚たちに、親の会の立ち上げに力を貸してほしいと説明して回りました。集まった仲間8人と、障がい児や疾患児を育てながら働きつづけていきたい思いを陳情書に綴り、2016年11月に「親の会」は朝日新聞社内で産声を上げました。

—— 現在会長を務められている「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」は、朝日新聞社の中で誕生したのですね。

「親の会」を立ち上げたあとに労働組合執行部の部屋を訪ねると、委員長は「あなたたちのような人のために労働組合はあるんです。一緒に頑張りましょう」と、両立支援制度をつくるために、会社と労使協議に臨むことを快諾してくださいました。

その後、人事部や労務部との協議を重ね、取締役会で従業員規則の改定が承認されたのです。

朝日新聞社では2017年度から、障がいや疾患がある子を育てる従業員については、子の状態に応じて短時間勤務や勤務配慮の延長が認められるようになりました。
小3までだった「短時間勤務」。その延長が、会社の制度として認められるまで【障がい児を育てながら働く⑭】_img0
親の会と朝日新聞厚生文化事業団共催で2023年度3回開催した連続セミナーに対して、会社からSDGs奨励賞をいただきました。両脇にいらっしゃるのは、いつも支えてくださる副会長2人(左:根本理香さん、右:深澤友紀さん)。

——ワークライフバランス懇親会から半年。「親の会」として会社に働きかけを続け、障がい児などを育てている親も継続して働き続けられるような制度を会社に作ったのですね。

娘が小学6年の年度末まで短時間勤務を続けることができたおかげで、両立することができました。一緒に署名してくれた仲間たちの子どもは短時間勤務でないと働けないほど重度ではありませんでしたが、我がことのように共感して助けてくれました。

 

また、私をワークライフバランス懇談会に送り出してくれた当時の上司に「親の会といっても、私だけ制度を利用させていただき申し訳ない」と話したことがあります。

「いやいや、のちに助かる人たちが必ず出てくるから頑張って」と上司は励ましてくれました。

その後、私の娘と同じように重い障がいのお子さんの親も参加するようになり、上司の言葉を改めてかみしめています。