日常にこそきらめきを見出す。俳優・坂口涼太郎さんが、日々のあれこれを綴るエッセイ連載です。今回のエッセイは前回に続き、「号外 食探偵涼ームズ〈後編〉」です。外食やテイクアウトだってもちろん大好き、そんなお涼さんが今日も料理をする理由。

「誰かの為に料理するすごさは計り知れへん」自炊を始めて知った腹の底からの感謝とご自愛【坂口涼太郎エッセイ】_img0
 

おだし事件を解決した「食探偵涼ームズ」にまた新たな事件解決の依頼が舞い込んだ。

白だし革命、茶碗蒸し事変、とろろ維新である。
 

 


白だしは私の好きなドラマ「きのう何食べた?」にたびたび登場し、シロさんが毎度いそいそとお料理に使っているなあ、とは思っていたけれど、おだし好きとしては「それおだしに味付けしたやつやろ? つくれるやん?」と思って、この4年手を出していなかったのだけれど、2ヵ月前、私とは別の俳優を担当しているマネージャーさんに「茶碗蒸しが好きやねんけど、家ではなかなかできへんやん? だから外食したときにメニューにあると必ず頼んでしまうねん」という話をしたところ、「え? 茶碗蒸し、家でむっさ簡単にできまっせ」ときょとんとした顔での返答があり、「え! うそ! どうやって!?」と聞けば、卵を溶いて、水と白だしを入れてレンジで2分チンしたらできる、と言うから、「おーい! またここでも白だしかよ!」となぜか白だしをめちゃくちゃ人見知りする涼ームズだけれど、茶碗蒸しがそんなに簡単にできるというなら買うしかないやん。その日の帰りにスーパーに寄り、白だしとみつばを買って、卵と冷蔵庫に入れておいた昆布だしと白だしを混ぜてラップをしてからレンジに入れて600Wで2分10秒チンして、みつばをかけて食べた。

うんまああああああああ! え、完璧に茶碗蒸しやん。めちゃくちゃおいしい茶碗蒸しやん。自宅で料亭の味やん。今までの茶碗蒸し外食しばりなんやったん? おうちで遜色なくできるやん。これはほんまに革命でっせ。茶碗蒸しの夜明けぜよでっせ。ありがとう白だし。ありがとう電子レンジ。ありがとうジャーマネ。

その後、他にも茶碗蒸しと同じように勝手に思い込み外食しばりしている料理があるのでは? と捜査を開始すれば、あった。とろろである。

今までとろろを食べたくなったらねぎしに行くというしばりをしていた私は、とろろも家でつくれるんちゃう? と思い至り聞き込み調査をすれば、やっぱり家でもとろろっちゃえるという事実が発覚し、スーパーで大和芋を手にいれてすりおろし、お醤油と本みりんとお味噌汁を少し入れて混ぜ、最後に青のりをまぶせばおうちでとろろ完全体が出来上がり、「ねぎしーーー! 今までありがとうーーー! 頻度減りまーーーす!!!」と心の中でねぎし巣立ちからのとろろ自立に涙しながら、とろろエブリナイトを開催するフェーズに入った。まあ、結局ねぎしのあのとろろが食べたくなる頻度が増えて、ねぎしには相変わらず帰省しているけど、そんな涼ームズはある日、自分のルーツについて向き合うことになる。

自らがいかにして食探偵涼ームズとしてちゃ舞台の上で起こる数々の事件を解決させる運びになったのか。その事実に向き合うことになったのは6日間のペルーロケから日本に帰ってきたときだった。

 
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