CAとパイロットは相性最高!?

「はー、だるい。何このスケジュール。おかしくない!? 香港日帰りが月2回もあるなんて無理無理! もう仮病つかおうかなあ」

21時、羽田・伊丹・羽田・札幌・羽田の4本フライトをこなして、ようやく空港を後にする。今日1日同じフライトチームだった訓練同期の吉田さんが、さっき告知された来月のスケジュールに文句を言い始めた。

「香港往復、たしかに体力的には大変だよね。今月はちょっと運がなかったかな?」

私はとりあえずうなずいてみた。本当はそんなことは思っていない。1本でも多く国際線を飛びたい。

「私、パイロットと結婚したいの」20代CAの熱意についていけない32歳の新人CA。隠し持つ写真に写っていたのは…_img0
 

海外空港に降り立つだけで、嬉しくて叫びそうになる。もっとも香港は日帰りスケジュールだから、街に出ることはできない。朝5時にピックアップされて、家に帰るのは深夜だから、吉田さんが文句を言う気持ちもわからなくはない。

「……酒井さん、とっても真面目だよね。この仕事の前は何してたの?」

吉田さんが少々居心地が悪そうにこちらを見ている。しまった。訓練同期とはいえ、既卒者募集で合格した仲間たちだから、年齢もバックグラウンドもバラバラ。今年32歳の私は、おそらく一番年上だろう。そのため、うまく距離感をつかめずにいた。

「前職は会社員で、事務なの」

私は短く、早口で答えた。

 

「事務! 事務職なんて恵まれてるのに、よっぽどキャビンアテンダントになりたかったんだね? 私はワーホリでオーストラリアに行ってたんだけどさ、ビザの関係で帰らないとならなくてしぶしぶ帰国したの。で、ちょうど募集があったからうちの会社を受けたんだ。

それにしても日本、賃金安すぎ! オーストラリアでは時給4000円くらいもらってたのよ。香港まで日帰り往復して、月に24万円じゃやってられないわ」

吉田さんはモノレールのなかにも関わらず、周囲を気にせずにまくしたててた。

「とにかく、今年中に絶対結婚する人見つけなきゃ。キャビンアテンダントっていうブランドが少しでも残ってるうちにさっさと結婚相手を探さないと。ねえ酒井さん、パイロットの知り合いいない? うちの会社じゃなくてもいいの。私、絶対パイロットと結婚したいの」

「……どうしてパイロットがいいの?」

思わず出た質問に、吉田さんは目を見開いた。