同著作は、「“父(男)は一番偉い大黒柱、母(女)は子育て。息子は強く頼れる跡継ぎ、娘は優しくしおらしく”的な伝統的家族観に沿った役割を強いることって多くの人にとって不条理なんだけど、なんで韓国は(日本も)そこから抜け出せないの? どういうわけ?」という謎の正体を噛み砕いていく本です。

韓国のサユリ騒動もこの本をきっかけに知ったんですが、より私の心に印象に残った……というか「あちゃー」となったのは、ネット掲示板で物議を醸したある男性の投稿——「結婚相手の女性が、実はDINKsを希望していることがわかったので結婚を取り止めたい」というもの。

本によれば、ネット上では「子供を持つ気がないなら、あえて結婚はしないという男」と「子供は産むつもりはないが、無駄な時間を過ごさず早く結婚したい女」と、どちらがわがままか? と言い争うコメントが相次いだのだとか。

女性側の考えからは「結婚・出産へのプレッシャー」が滲むわけですが、もしこの人が友人だったら未婚の私はこう聞いちゃう気がします。「子供を産まないなら、なんで結婚したいの?」。なんなら「非出産の既婚者」の友人に、実際そのようなことを言ったことあるし。

その発言の言外に無意識にあるものは、私が「出産と結婚」を強く関連付けていることであって、「未婚での出産は、美しくもないし、正常でもない」という人たちとか、「子供を持つ気がないなら、結婚しない」「結婚は子孫繁栄のためのもの」みたいな件の男性と、さほど変わらないんですね。

【自発的シングルマザー】韓国の藤田小百合さんの生き方から考える「子どもを産むか産まないか」その権利は誰のもの?_img0
 

改めて、結婚と出産は、基本的に、個人の幸せのために、個人の選択でなされるべきもの。もちろん責任は伴うんでしょう。特にサユリさんの精子バンクを使った妊娠については、始まったばかりのシステムで今後どんな問題が生まれてくるかわからないものです。でも、少なくともネット上で「無責任!」「受け入れられない」と批判する見ず知らずの人は、彼女の「子供のいない人生」にも「子供がいる人生」にも、何の責任も負ってくれない外野も外野の存在です。精子バンクでなくても「未婚で産むなんて」、子連れ離婚でも「子どものために我慢すべき」と言う人たちだし、暴力やモラハラに苦しみながらの結婚生活&子育てを、それでも「正常」という人たちかもしれません。

さてサユリさんは決意した理由を説明した際、こんなことも言っています。

「韓国で中絶手術をするのは女性の権利と言ったのが話題になった。中絶が女性の権利であれば赤ちゃんを産む権利も女性の権利だと思う」

多くの女性、特に日本の女性は「子どもを産むか産まないかは、当事者女性が決めていいものではない」と考えがち。でも「子供を産むか産まないかを決める権利は、女性にある(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」というのが国際的な認識です。

避妊用ピルの認可には30年以上かかったのに、男性の勃起不全の治療薬バイアグラはわずか半年で認可された」という日本で、女性のセックスがそもそも「男性のため(快楽と父権主義的家制度の維持)」のものである証拠なのかもしれません。

【参考文献はこちら】『家族、この不条理な脚本』キム・ジヘ著、尹怡景 (翻訳)、 梁・永山聡子 (解説) LGBTの権利や性教育を認めれば「家族が崩壊」する?私たちを無意識に拘束する「健全」な家族という虚像が作りだす抑圧や差別、排除を可視化する。日韓累計25万部、『差別はたいてい悪意のない人がする』の著者待望の第2作。
写真/Shutterstock
 

【自発的シングルマザー】韓国の藤田小百合さんの生き方から考える「子どもを産むか産まないか」その権利は誰のもの?_img1
 

前回記事「「奥さん」「嫁」「〇〇ちゃんのお母さん」etc. その“呼び名”によって役割を刷り込まれていませんか?」はこちら>>

 
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