その5万円がますますあなたを追い込むことに
「しかし、その書面は解約合意書。読んでいくと、この5万円の支払いをもって双方の間には債権義務はなしとすることが書かれています。
つまり、5万円を払うことで今回のサポート契約は終了。この5万円を返したらそれ以上は返しませんよということなのです」(佐久間さん)
契約書って、そこまで細部まで読まない人も多いのではないでしょうか(私だけ?)。5万円振り込むからここにサインしてと言われたら、なんの迷いもなく署名してしまいそうです。
しかも、この署名は詐欺被害を訴えるときに、厄介なものになるといいます。
「副業詐欺を専門に取り扱っている弁護士だと、『署名があっても無効だから、返金請求していきましょう』となるんですが、副業詐欺について詳しくない弁護士の場合、解約合意書に署名している事実があるから受任しませんとなってしまうんです。署名があるから無理と判断されることも多い」(佐久間さん)
それって、泣き寝入りしなければならないということでしょうか?
「解決のためには、業者側にまずは話し合いで返還請求を行います。それで解決しない場合は、次は裁判。裁判の場合、この解約文書が相手側から提出されるわけですよ。
そうすると、裁判官も解約の文書があるから『さすがにこれは…返還請求は認められないな』となる。大の大人がこういう署名をしているという事実があるわけですから。
その既成事実を作るために、詐欺業者はあえて5万円返金するというエサを投げるわけです」(佐久間さん)
どこまでも巧妙に練られていて、怖すぎます。
「でも、ここからがスタートなんです。電話での勧誘は、意外に逃げられないもの。そのため訪問販売と同様に、電話勧誘販売が法律でも規制されています。ちゃんと事業者が消費者にクーリングオフできるという書面を出さないといけないというルールがあるのですが、そんな書面は出されていない。その時点で、詐欺とか関係なく法律違反なんです。
特別商取引法(特商法)違反だから、無条件解除して全額返金してくれという権利はこちらにあるし、それにプラスして、そういう書類を出していないことで特商法の厳罰規定もあります」と佐久間さん。
その話を聞くと、俄然、希望の光が見えてきました。
「ただ、特商法ってそれほど強い法律ではないんです。詐欺罪になれば、実刑もありますが、特商法違反なら刺されてもそれほど痛くないので、詐欺業者側も『まあいっか』と思っている。
警察も、ネット関連の特殊詐欺は捜査ソースがないので、あまり前向きではない。そうなると、我々のような弁護士から返金請求するのが一般的です。そして、彼らもバカではないので、やっぱりある程度、返金する時は返金するんですよ。
彼らも、できれば逮捕まではされたくない。それだったら、弁護士が入ったら、少しは返していこうかなというテンションで返金に応じます」(佐久間さん)
副業詐欺もこれだけ増えていたら、詐欺事件としてニュースになっても良さそうなものですが、あまり目にすることはありません。
「この2年くらいで副業詐欺はどんどん進化しています。詐欺業者側も少しずつ賢くなって、警察や法律が追いつけなくなっています。事例もないので、みなさんそこで引っかかったり、泣き寝入りしたりとなってしているのが現実です」(佐久間さん)
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