なぜか「さあ頑張ろう!」という時ほど水を差される人生


根本 なるほど、そうでしたか。さっき言っていた”自分の悪いクセ”は、仕事でも影響したりしますか? 思ったことを言えないというのはまずあると思いますが、ほかには。

M子 そうですね……仕事でつまらないミスをする時はだいたいパターンが決まっていて、その案件に関わる人全員の意見を聞いて、全部を反映しようとしちゃうんですよね。人の意見を聞くというとなんか聞こえがいいけど、私のは全くそうじゃないんです。こうしてほしいと誰かに言われると「こうしなきゃ!」ってそのことしか見えなくなって、別にそこまで聞かなくていい人の話まで反映しようとしちゃう。それで本来一番大切にするべきことが見えなくなって、いろんなことがブレブレになる。

そうかと思えば逆のパターンもあって。どんなに意気込んで始めた仕事でも、「なんか思っていたのと違うな……」と思うと一気にやる気が削がれちゃう時があるんです。理想どおりにいかないことなんて、仕事していればいくらでもあるじゃないですか。何でも好きにやれるなら仕事じゃないだろって自分でも分かってるのに、ダメなんです。

根本 なるほどーー。だいぶ疲れそうですね。

 

M子 疲れます……。

根本 生きづらさ、みたいなのを実感します? 今はもうないですか。

M子 この歳になってだいぶラクになりましたけど、なんでこんなにうまく行かないんだろう? とは今でもよく思います。なんでこんなに試されるようなことばっかり起きるんだろうって。

根本 ほう、試される?

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イラスト:Shutterstock

M子 仕事でいうと、ライターで独り立ちしてしばらくは「最初に聞いた話と違う!」というような案件を引き当ててしまうことがすごく多くて……。そういう経験しているのは私だけじゃないというのも分かっているし、きちんと確認しなかったのが悪いと言われればそれまでなんですけど、さあこれからって時になんでこういうことばかり起きるんだろう、自分はこの仕事向いていないのかと、一時期本気で悩んでいたこともあります。

私生活でもそうなんです。20代の頃に、当時付き合っていた彼と結婚前提で一緒に住むことになったんですね。そうしたら、新居に引越ししてひと月も経たないうちに、彼が会社からリストラされて無職になったんです。幸い次の仕事はすぐに決まったものの、本人は納得できていなくて、逆に私はだんだん仕事が面白くなってきた頃で。そこからいろんなことが噛み合わなくなって、結局、同棲を始めてから2年で別れました。どうせ結婚するんだからと中古マンションまで買ってたんですけどね……。

その彼に対して今さら未練はないですよ? ただ仕事でも私生活でも、私が「さあここから頑張ろう!」と、めずらしく前向きになっている時に限って水を差される。まさかと思うようなところから横やりが入るんです。

根本 なるほどー。不思議なめぐり合わせがあるんですねえ。

M子 めぐり合わせ(笑)。いや本当に、まるでタイミングを測ったようにキツいことが降ってくるのはなんなんだろうと、この20年ずっと思っていますね。


ーー自分の中に押し込めていた感情を、少しだけ吐き出すことができたM子。根本先生はここから、母親や他の家族との関係を聞き出していきます。M子が「いまだに忘れることができない」という、かつて母から言われた言葉とは?(第4回につづく)

構成/山崎恵
 

 

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