加えてトランプ氏は、不法移民の排除も強く主張しており、もしこの政策も同時並行で実施された場合には、米国に住んでいる移民の多くが国外退去処分となります。米国では移民が低賃金労働に従事することで社会全体のコストが抑えられてきましたから、一連の政策は物価上昇をさらに悪化させます。

客観的に見た場合、トランプ氏の政策は必ずしも米国の労働者にとってプラスとは限らないのですが、トランプ氏に投票した人の多くは、実際の経済的効果よりも、外国企業を排除するというトランプ氏の強いメッセージに共感しており、この流れは簡単には覆りません。

では、米国の物価が上昇すると、私たちの生活面にはどのような影響が及ぶでしょうか。これも状況次第ではありますが、おそらく円安という形で日本にも物価上昇の波が押し寄せると考えられます。

米国の物価が再び上昇した場合、米国の中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度理事会)は、金利を上げるという選択を行う可能性が高いでしょう。一方で日銀は現時点においてもアベノミクス(大規模緩和策)を継続中ですから、金利は低い状態が続いています。

ここで再びアメリカの金利が上昇することになれば、日米の金利差が拡大し、ドルが買われて円が安くなる動きになると予想されます。過去2年、円安が進んだことから日本では輸入物価が上昇し、食品やガソリン代などを中心に多くの商品が値上がり、私たちの生活を苦しめました。

このところ円安は少し落ち着き気味でしたが、トランプ氏が公約を実現させた場合には、再び円安が進み、物価上昇が激しくなる可能性が考えられます。実際、トランプ氏が優勢というニュースが出てくるたびに、為替市場では円安が進むなど、市場は物価上昇を織り込み始めているようです。

【米大統領選】トランプ氏返り咲きで、さらなる「物価上昇」の可能性が...高関税・移民排除政策で日本の生活はどう変わる?_img0
日本時間11月6日、トランプ氏優勢で円安が加速する対ドル相場。写真:AP/アフロ

中長期的にはトランプ氏の政策は米ドルの力を弱める作用をもたらす可能性があり、再びドル安(円高)になる局面も来るかもしれません。しかしながら、当面は円安傾向が続く可能性が高く、私たちは製品の値上げラッシュ復活について警戒しておく必要があります。

もっとも、前述のようにトランプ氏は気まぐれですから、関税政策などについて突如、方針転換する可能性も考えられます。コロコロと政策が変わるのは困ったことですが、日本人にとってはトランプ氏が心変わりした方が影響が少なくなるでしょう。

 
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