お風呂は「気持ちいい」と思い出せるよう、焦らずに声かけを

トイレ介助は女優経験を活かして「壁のシミ」になる! ケアマネと女優のダブルワークを実践する、北原佐和子さんの声かけ術_img0
 

入浴は、利用者さんにとっても、介護する私たちにとっても、かなり大変な作業です。入浴したがらない人もいるのですが、声かけなどいろいろな対応をして、やっとお風呂に入った方でも、入浴中には「あー、気持ちいい」とおっしゃいます。

一般的に介護施設のお風呂タイムは、夜ではなく日中であることが多く、それが抵抗を感じる理由のひとつであるかもしれません。そして、服を脱ぐのが恥ずかしいという羞恥心もあると思います。

服を着た私たちスタッフと一緒に、裸の利用者さんは洗い場で体を洗ったり、バスタブに浸かったりするわけですから、妙な話です。

気持ちよくリラックスするはずの入浴が、緊張を強いられる辛い時間になってしまい、せっかくデイサービスに来たのに、「お風呂は入らない。家で入っているから」と強く言われてしまうのです。

私は、羞恥心にさいなまれず、リラックスして入浴してもらえるように、歌が好きな人には、一緒に歌いながら服を脱いでもらうこともあります。

基本的には、服を脱いだりするときは、できるだけ利用者さんがやり方を思い出し、自分のペースで自らやれるように待ちます。

ほどよい距離感を保ちながら、
「さっぱりして気持ちいいですよ。疲れが取れますよね」
とお風呂の楽しみを思い出せるよう、根気強く声かけを続けます。

ご自分で洗える方はいいのですが、なかなか指先がうまく動かなかったりする方もいます。でも、なるべく手は出さない。
「耳の後ろも忘れずにお願いしますね」
などと声かけして、できる方にはご自分でやってもらうように促します。

* * *

ケアマネとしても、准看護師としても、まだまだ新人の私です。先輩方とお話し合いをして、学ばせてもらっています。

みなさん、本当に奮闘されていて、刺激になります。
私もその中のひとりとして、がんばっていきたいと思っています。
 

 
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『ケアマネ女優の実践ノート』
著者:北原佐和子 主婦と生活社 1830円(税込)

女優としての経験を活かし、介護現場で奮闘する北原さんが語るのは、「女優の仕事と介護の仕事は似ている」という視点。つれなくされても「諦めない」、必要なことは「ストレートに伝える」、食事は五感を刺激して楽しんでもらうなど、介助のコツや相手の心に寄り添うコミュニケーションを、北原さんならではのエピソードも交えながら紹介します。ちょっとした声かけから始められる、高齢の家族をサポートするためのヒントが満載です。


撮影/武藤奈緒美
ヘアメイク/小川幸美
イラスト/田村記久恵
編集・文/本村のり子
構成/金澤英恵
 
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