何が好きかよりも、なぜ好きかを突きつめる


——40代になると自分で何かアクションを起こさないと人生って変わらないんですよね。そうわかっているのに、年をとるとどんどん腰が重くなって、何かを始めるのが苦手になるっていう。

キャリア全盛期にNYへ。鶴田真由が悩めるミドル世代に伝えたいこと「しがみついたまま壊れるより、早めに手放した方が楽です」_img0
 

いきなり大きなことをやろうとすると億劫になりますよね。だから、最初は小さなことでいいんじゃないでしょうか。ちょっと興味のあることとか、自分が楽しめそうだなと思うことを、少しずつ自分の生活や仕事の中に取り入れていく。それだけで結構変わると思いますよ。

──そこで言うと、新しく習い事を始めたいなと思っているんですけど、コミュニティに馴染まなかったらどうしようとか考えちゃって、なかなか動けません。

コミュニティなんて入らなきゃいいじゃないですか(笑)。

──強い。

何事も始めるときは面倒くさいんですよ。でも、やりはじめると楽しい。運動もそうですよね。面倒くさいなと思うけれど、やるとスッキリする。だから、まずは癖づけをしてみるといいと思います。気になったら、まずは動いてみるという癖をつける。

 

──鶴田さんは40代から始めて、今の自分を支える幹の一つになっているものはありますか。

写真かな。旅にカメラを持っていくようになってから、撮ることが習慣になっていって。でもよくよく考えたら、学生の頃から写真を撮ることが好きだったんですよね。別に本格的に撮っていたわけではないですが、そういえば楽しいと感じていたなって、また撮りはじめてからあの頃の記憶が甦ってきました。

──カメラという新しい趣味ができて、世界の見え方も変わりましたか。

最近花の写真を撮っているんですけど、寄って撮ると普段はなかなかじっくり見ることのない花のパーツに目がいくんですよね。おしべってこんな形してるんだとか、めしべってちょっと湿っているんだとか。確かツワブキだったかな。萼(がく)を覗いてみたら何かの形に似ていて。そうだ、コロナウイルスだって。きっとそれも偶然じゃなく、何かしら意味があると思うんですよ。自然がつくり上げたものは、必ずその目的に最適な形だから。そういうことを考えている時間が楽しくて好きです。

──その世界を面白がる好奇心が、ミドルエイジにはすごく必要なんじゃないかなという気がしました。あと、カメラに関してももともと学生の頃から興味はあって、それが今につながっているというのも素敵です。やりたいことや好きなことを見つけるのが難しいという声も聞きますが、実はこれまでの人生でちゃんと種は撒かれていて、その種に気づけるかなんですよね。

別にそんなに大きなことではなくていいと思うんですよね。日々の暮らしの中で楽しいなと感じるものに対して、なぜ自分はそれを楽しいと思うのか、ちょっと掘り下げてみる。きっとそこに種があるんだと思います。

たとえば料理が好きな人も、人に食べてもらうのが好きな人と、これとこれを組み合わせたらこういう味になるんじゃないかと想像するのが好きな人とでは全然違いますよね。前者であれば、料理以外でもきっと人に喜んでもらうことから新しい楽しみを見つけられる気がしますし、後者なら何かものづくりとかをやってみても楽しめるかもしれない。何が好きかより、なぜ好きかを突きつめてみると、人生の幅を広げるヒントが見つかるかもしれません。

キャリア全盛期にNYへ。鶴田真由が悩めるミドル世代に伝えたいこと「しがみついたまま壊れるより、早めに手放した方が楽です」_img1
ニット¥48400、ブラウス¥48400、スカート¥42900/スズキ タカユキ(tel. 03-6821-6701) リング¥99000/リニエ ピアス¥14300(アペルディエム)/アテンション・ジャパン・プロダクツ(tel. 03-5724-3730)

鶴田真由 Mayu Tsuruta
1988年女優デビュー。その後、ドラマ、映画、舞台、CMと幅広く活動。代表作には、ドラマ「妹よ」「君と出逢ってから」「徳川慶喜」「お仕事です!」「サトラレ」、映画「梟の城」「半落ち」「カーテンコール」などがある。1996年には「きけ、わだつみの声」で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。旅番組、ドキュメンタリー番組への出演も多く、番組出演がきっかけで、2008年には第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)の親善大使の委任を受けた。著書に旅エッセイ「ニッポン西遊記 古事記編」「神社めぐりをしていたらエルサレムに立っていた」(共に幻冬舎)、写真集「Silence of India」(赤々舎)などがある。また近年、音楽家など様々なアーティストとジャンルの枠を超えた活動を精力的に行い、クリエイションの場を広げている。2021年2月より、メディアプラットフォーム「note」にてエッセイを執筆。

「連続ドラマW 誰かがこの町で」
キャリア全盛期にNYへ。鶴田真由が悩めるミドル世代に伝えたいこと「しがみついたまま壊れるより、早めに手放した方が楽です」_img2
 
WOWOWにて、12月8日(日)22時よりスタート(全4話)
放送:毎週日曜22時~ ※第1話無料放送【WOWOWプライム】【WOWOW4K】
配信:第1話放送・配信後、全話一挙配信 【WOWOWオンデマンド】
出演:江口洋介 蒔田彩珠
鶴田真由 宮川一朗太 尾美としのり 玄理 戸次重幸 本田博太郎 でんでん 大塚寧々
原作:佐野広実『誰かがこの町で』(講談社文庫)
監督:佐藤祐市 脚本:前川洋一 音楽:木村秀彬
企画・プロデュース:青木泰憲 プロデューサー:廣瀬眞子 水野綾子
制作協力:共同テレビジョン 製作著作:WOWOW


【第1話無料配信中】




配信期間:〜2025年1月14日 17:00 
撮影/塚田亮平
スタイリング/平井律子
ヘアメイク/伏屋陽子(ESPER)
取材・文/横川良明
構成/山崎 恵
キャリア全盛期にNYへ。鶴田真由が悩めるミドル世代に伝えたいこと「しがみついたまま壊れるより、早めに手放した方が楽です」_img3