「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」という団体をご存じでしょうか? この会では、障がい児や医療的ケア児を育てながら、働き続けたい親たちが、ゆるやかにつながり、支え合っています。

障がい児や、医療的ケア児を育てながら働こうとする親の前には、両立を続けるためのハードルが幾重にも立ちはだかっています。子どもや家族の暮らしを守るため、この団体は行政や勤め先への働きかけを続けています。ケアの必要な子を育てている親も働き続けることができるよう、育児・介護支援制度を子の年齢で区切らず、障がいや疾患の状態に応じて配慮してもらえるよう、社会を変えようとしているのです。

この会の会長であり、朝日新聞社に勤めながら、重度の知的障がいを伴う重い自閉症の16歳の娘さんを育てていらっしゃる工藤さほさんへのインタビュー、第19回です。


第18回はこちら>>>​【障がい児を育てながら働く⑱】「好きな男の子」ができ、学校が楽しくて...。できることがどんどん増えていく旭出学園での成長
 

 


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—— 娘さんは現在高校2年生とのことですが、今はどのように過ごされていますか?

気づけば高校生活あと1年を残すところとなりました。最近では将来の自立に向けて、学校でも少しずつ練習を積み重ねています。

—— どのような練習をされているのですか?

娘の通う私立特別支援学校では、将来、家から離れて暮らす日々に備えるために、中3、高1で1週間の「体験入寮」、高校2年、専攻科2年のタイミングで5週間の「長期入寮」があります。希望者のみで強制ではなく、週末には帰宅します。

娘が初めて体験入寮をしたのは中学3年の時。高1の秋にも1週間の体験入寮をし、高校2年の春に「長期入寮」をしました。中3のときはすぐに家に帰ると言っていた娘ですが、今回はとても楽しんで過ごせたようです。

—— 5週間も寮で生活されたとは、とても貴重で重要な体験ですね。

将来、家族と離れて暮らすようになったときの本人なりの「自立」にそなえた学校のカリキュラムの一環です。寮は校内にあり、男子棟と女子棟に分かれています。食事や自由時間は男女一緒に過ごしますが、居室は完全個室。男子と女子に分かれて宿泊します。朝食に何を食べるか決めたり、準備のためのお買い物に先生と一緒に出かけたりします。

【障がい児を育てながら働く⑲】将来の自立に向けての練習、女性としてのケア。高校2年生になった娘と母の今_img0
入寮体験で先生と一緒にお買い物に行く娘。


入浴や歯磨き、洗顔なども寮の先生や担任の先生と一緒に練習します。週に1度、水曜日の余暇活動もお友達と一緒に何をするか決めます。娘は近くにあるアイスクリーム屋さんに行ったり、カラオケに行ったり、電車に乗って隣駅まで行き、ホームで電車を数本見送って寮に戻る「電車を見よう」という余暇活動などを楽しみました。

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入寮体験。掃除の仕方も身につけていきます。

—— お風呂などはどのようにされるのですか?

寮の先生が一緒にお風呂に入ってくださり、洗髪や体を洗う練習を娘と一緒にしてくださいました。洗髪や体洗いの手順表を学校からいただき、今も娘は毎週1回、ヘルパーさんと自宅での練習を続けています。

【障がい児を育てながら働く⑲】将来の自立に向けての練習、女性としてのケア。高校2年生になった娘と母の今_img2
入寮体験で、髪の洗い方や体の洗い方なども学びました。

私と一緒だと、幼児期からの習慣が抜けないんです。洗ってあげないと不機嫌になってしまったり、石けんの泡を食べてしまったりして……、困り果てていたところでした。学校の協力で少しずつ、自立に向かって娘なりに歩んでいます。