映画『愛を綴る女』~一番幸せな愛し愛され方って?愛に生きるヒロインが私たちに問う女性にとっての普遍的テーマ_img0
 

『愛を綴る女』
監督:ニコール・ガルシア
出演:マリオン・コティヤール、ルイ・ガレル、アレックス・ブレンデミュール
配給:アルバトロス・フィルム ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開中
ⓒ (2016) Les Productions du Trésor - Studiocanal - France 3 Cinéma - Lunanime - Pauline's Angel - My Unity Production


女性にとって愛される方が幸せなのか、それとも愛する方が幸せなのか。フランス映画『愛を綴る女』は、そんな永遠に答えの出ない問題に向き合った作品といえるかもしれません。ヒロインは、プロヴァンスの田舎町で暮らすガブリエル。エミリー・ブロンテの『嵐が丘』を貸してくれた青年に恋をして、官能的すぎる手紙を送って相手をひるませてしまうような、大胆で夢見がちな美しい娘です。ファナティックな娘を心配した母が結婚相手として連れてきたのは、寡黙で真面目なスペイン人労働者のジョゼ。情熱も安らぎもない結婚生活を送るなか、ガブリエルが腎臓結石の治療のために訪れた療養所で出会ったのは、帰還兵のアンドレでした。彼こそが探し求めていた運命の相手だと感じた彼女は、療養所を出てからも手紙を綴り続けますが……。

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ガブリエルを演じるのは、『エディット・ピアフ~愛の讃歌』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したフランス人女優、マリオン・コティヤール。グザヴィエ・ドラン(『たかが世界の終わり』)など若きシネアストの作品に出演しながらハリウッドでも活躍を続ける彼女が、“恋愛体質”という言葉では語りきれないほどに激しいヒロインを演じています。愛を求め、愛に生きる女を演じるからには当然でしょう? とばかりに、心も体も裸になってスクリーンに現われる彼女の存在感は圧倒的! 瞳の奥の表情で狂気とすれすれの脆さも感じさせてくれます。

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野性的で朴訥な夫と、ガラス細工のように繊細な帰還兵。タイプの違うふたりの男性が登場するからといって、彼らが“ケンカをやめて”状態にならないのが、過去と現在が幻想的に交錯するミステリーとしての側面も持つ、この映画の面白さ。視点をくるりと変えて描かれるラストには、切なくて美しい驚きの種明かしも用意されています。情熱的な真実の愛を傷だらけになって探し求めるガブリエルの冒険はどこに辿り着くのか? 愛と情、記憶の美化、そして足もとの幸せを描いたこの映画は、ミモレ世代の胸にこそ響くのではないかな、と思います。人生の第二幕が穏やかにはじまるような幸せな感触を、ぜひ映画館で味わってみてください。

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PROFILE

細谷美香/1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。
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