76歳でツイッターを始め、83歳となる現在、そのフォロワー数は約9万人! という溝井喜久子さん。「何でもやってみるのが一番よく分かるの」とIT時代にまったく抵抗を示さないどころか、「お年寄りを敬えなんて冗談じゃありませんよ」と、ツイッター上で古い価値観に疑問を呈し続けています。その溝井さんの根底にあるのは、「古い価値観に流されていると苦しい状態になる。自分で考えて選択し、行動することで身を守らないと」という考え方。詳しく伺ったところ、mi-mollet世代にとって為になるお話が山盛りでした!

溝井喜久子 1934年生まれ。埼玉県出身。お茶の水女子大学理学部卒業。教師として働いた後、結婚を機に専業主婦に。76歳から始めたツイッターが話題になり、フォロワー数は約9万人を超える。今年3月に、名つぶやきを厳選した著書『キクコさんのつぶやき 83歳の私がツイッターで伝えたいこと』(ユサブル)が発売。2人の息子と2人の孫がいる。現在、ご主人は逝去され一人暮らし。

 

夜中にTwitterのリプライをすることも
 

 溝井さんの自宅にあるiPadは4台。他に、キッチンには立派なデスクトップパソコンも設置されている。

「画面を見ながら作業したいときもあるから、iPadは最低でも2台必要なんですよ。それに新しいシリーズが出ると、やっぱりそっちのほうが性能がいいでしょう。それでつい欲しくなって買い替えていたら、どんどん増えてしまったの」

溝井さんのiPadにはダウンロードされたアプリがいっぱい。音楽もよくAmazonミュージックで購入している。

その数が物語るように、溝井さんの日常はITとは切っても切り離せなくなっている。

「夜は寝るのが早いから、大抵夜中に一度目が覚めるんですね。そうしたら、特定のユーザーにリプライするの。フォロワーには海外に住んでいる方も多いから、夜中でもやり取りする相手はいっぱいいるんですよ」

 朝は6時に起きて、まず朝食をとる。そこからの過ごし方は、ツイッターにメッセージを上げたり、リツイートに答えたり、リプライしたりしながら、合間に昼ご飯、夜ご飯を食べる、というのが基本だ。

「食事もね、朝昼晩と写真に撮ってツイッター上にアップするの。人に見せるとなるときちんとしたものを作るようになりますし、あとは遠方に住む息子を安心させるためもありますね。だから多少しんどくても、必ずアップするようにしているんです。それで目が疲れたら、裏庭に出ていって花の水やりをするの」
 

歳をとればとるほどテクノロジーは必要


 溝井さんの毎日は、デジタルとアナログが非常にいいバランスで混在している印象。現在は一人暮らしだが、「私は一人で暮らすことが当たり前だと思っているし、好きなの。だから私が一人で死んでいても、孤独死ではありません。大往生と言ってほしい」ときっぱり言い切る。

裏庭には広い花壇が。画面の見過ぎで目が疲れると、庭に出て気分転換。

「一人で生きていきたいからこそ、テクノロジーが必要なの。もしこの先AIが当たり前になったら、きっと買うと思いますよ。値段にもよるけど(笑)。たとえば私ぐらいの歳になると、薬も飲んだか飲まなかったか、よく分からなくなるんですね。そういうときにAIが『今日は飲みましたよ』と教えてくれたら、とても助かる。それから、昔の私は煮物を作っている最中にお掃除をしていたの。でも今それをやると、煮物のことを絶対忘れてしまうからできなくなった。やはり一人暮らしにとって一番怖いのは火ですから。昔ならそういう状態になると、家事はお嫁さんに全部やってもらっていました。でもAIがあれば、『火を消し忘れてますよ』とか、きっと教えてくれるでしょう。テクノロジーが使えれば、何歳になっても人に頼らなくていい。それはすごく尊厳のあることだと思うのです」
 

老後は“自己完結”が大事になってくる


 実は最近、転んで肩を悪くしていたという溝井さん。しかし買い物も、ネットスーパーで注文し配達をしてもらったので何の支障もなかったという。さらにその期間、「運動不足にならないため」とAmazonでウォーキングマシンを購入し、運動にも励んでいたという。

最近ネット注文で購入したものでお気に入りは、iPad用スタンド。「自分を撮影するときに便利なの」と笑う。

「今はね、自己完結をしなくちゃいけない時代だと思うんです。昔はたしかに、子供やお嫁さんに世話をしてもらわないとやっていけないところがあったかもしれません。でも何もかもが便利になった今は、ある程度健康でさえあれば、年寄りでも大抵のことは自分でできます。買い物だってネットでできるし、お金だって民間の保険商品もいろいろあるから、そういうのをちゃんと準備しておけばいい。それで何か分からないことがあっても、インターネットで聞けば大抵答えが見つかりますし、子供を頼らなくとも、自分で完結させられるんですよ。私はね、若い頃から常に『こうはなりたくない』というものがハッキリあって、そうならないために努力してきたんです。貧乏は嫌だから働かなきゃとか、若い人に迷惑をかけたくないから自立していようとか。だから皆さんにも、『嫌だ』と思う方向にいかないよう努力をしましょう、と伝えたくて、せっせとツイッターでメッセージを発しているの」
  
 そのツイッターでは、「子供を自立させるまでが親の務め。その後は自分の老後を考えて準備する期間」とつぶやいていたほど強い自立心を持ち続けている溝井さん。そこで溝井さんのような老後を迎えるために、mi-mollet世代の今、やっておくべきことは何か聞いてみた。

「お金を蓄えること。こればかりはいくらあっても不安ですから、とにかく貯めるしかないんですよ。あとは病気になったりケガをしたりしないよう気をつけること。体や歯のメンテナンスをしっかりおこなうなど、ね。この2つさえあれば、何とかなるものですよ。言い換えれば、老後に困る状態になるのは自分の準備が甘かったということ。自分の責任なんですよ。……なんてことは、この歳になったからこそ言えるんですけどね。若い頃に言ってたら、あっという間に炎上していたでしょうね(笑)」
 

 

<著書紹介>
『キクコさんのつぶやき 83歳の私がツイッターで伝えたいこと』

溝井喜久子 著 ¥1400(税別) ユサブル

溝井さんのツイッターの中で、反響の多かったつぶやきを四章に分けて紹介。一章のテーマは「年寄りを敬えなんて冗談じゃありません」、二章のテーマは「それが世の中の心理っていうものです」、三章のテーマは「日々思うこと、感じること。」。そして四章はフォロワーからの質問に答える一問一答となっている。ツイッターでは語られていない、それぞれのつぶやきの背景にある考え方も述べられていて、mi-mollet世代にとっては為になる一冊。


撮影/横山翔平(t.cube)
取材・文・構成/山本奈緒子