近年、30代の若手歌舞伎俳優の活躍が目覚ましく、注目が集まっています。そのうちの一人が尾上右近さん。清元宗家七代目・清元延寿太夫の次男として生まれ、曾祖父は六代目尾上菊五郎、母方の祖父は俳優・鶴田浩二という血筋の持ち主。2005年に二代目尾上右近、2018年に清元栄寿太夫を襲名し、歌舞伎はもちろんのこと、映画やドラマ、バラエティ番組などで活躍しています。そんな右近さんは、「1年に360食カレーを食べている」というほどの、無類のカレー好き。その愛が高じて、4月26日に熱すぎるカレー愛を綴ったエッセイ『尾上右近 華麗なる花道』を上梓します。

「カレーと歌舞伎ってものすごく似ているんです」「カレーは歌舞伎役者にとって万能な食べ物」などと語る右近さんに、カレーと歌舞伎愛についてお話を伺いました。

 

尾上右近(おのえ・うこん)
1992年5月28日生まれ。屋号は音羽屋。曽祖父は六代目尾上菊五郎。母方の祖父に昭和のスター鶴田浩二。2000年に7歳で歌舞伎座にて初舞台。2005年に12歳で二代目尾上右近を襲名。2018年に歌舞伎伴奏音楽である清元唄方の名跡、清元栄壽太夫を襲名した歌舞伎界の二刀流。大河ドラマ『青天を衝け』をはじめ、ミュージカル、バラエティー、歌番組や情報番組のキャスターなど多方面に活躍。映画『燃えよ剣』にて第45回日本アカデミー賞 新人俳優賞受賞。趣味は絵を描く。歌を歌う。カレーを食べる。

 

ご飯好きが高じて、カレー好きになった。


右近さんのカレー遍歴のスタート地点にあるのは、母が作る家のカレー。もともとご飯が大好きで、カレーだと好きなご飯がたくさん食べられるからと振り返ります。

「ご飯と相性が一番いいのはカレーというのは、小学校高学年くらいから気づいていました。魚のおかずがあっても、ご飯はせいぜい2杯くらいまで。カレーなら3杯は確実に食べられますから」

同じく幼少期からよく食べていたのが、歌舞伎座のすぐ近くにある「ナイルレストラン」。歌舞伎関係者にとってはもはや楽屋の一部のような感覚で、公演直前に食べることも少なくないそう。

「胃が苦しくなって後悔したことはあります。立役の時は気合いで動けるからいいんです。ただ、女方でじっとしていなければいけないときは、『うっ』となります。鬼の形相でお辞儀をしていることもあります(笑)」

 

年間360食もカレーを食べるようになったのは、実家を出て一人暮らしをするようになってから。23歳から自主公演をはじめ、自分で自分の時間を管理しなくてはならなくなった時、カレーを食べる頻度が増えていったといいます。

「食べる時間はこだわりたいけど、そんなに時間をかけることもできない。そんな中、一皿ですぐに食べられておいしいカレーにたどり着きました。人に教えてもらっていろんなところをぐるぐる回るようになったのもこの頃からです」

そこまでカレーを食べていて、他にどんなものを食べているのか気になるところ。

「ラーメンも、お寿司もお肉も好きですよ。もともと太りやすいので、役柄的に太っているとまずい時は気をつけますし、ジョギングもしています。一度、げっそりしていないといけない役柄の時は1ヵ月間カレーを封印して、サラダだけで過ごしてやせたことがあります。そのお仕事が終わって、次は歌舞伎の舞台があったのですが、歌舞伎ではある程度体格がよくないとだめなので、10日間どこまで太れるかやってみたことがあるんです。カレーの大盛りを毎日食べていたら8kg増えてました。仕事という大義名分があったので、罪悪感は全くありませんでした(笑)。食べていないと気持ちが不健康になるというか。食べていたら元気になれる。それが一番大事だと思いますね」