米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

Fox Searchlight Pictures / Photofest / ゼータイメージ

夫婦でも親子でも、きっと他人には見えないところで山あり谷あり。そういう部分では『世界にひとつのプレイブック』とも共通していたのが、『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』。余生を送るためにインドのリゾートへとやって来たものの、予想外に古ぼけたホテルで過ごすことになった、イギリス人の男女7人の物語です。

彼らが到着したホテルがあまりにもオンボロすぎて、さすがにこれはありえない! とリアリティを感じられずにいたのですが、みんなが抱えている事情が見えてくるにつれ、物語に引き込まれていきました。
夫を亡くして負債を抱えた妻、イギリスに家を買うはずだったのに資金が足りなくなった夫婦、恋人を求めてやってきた人……。みんないくつになっても人生をあきらめていないし、嫉妬の感情もある。

彼らの生き方を見ながら思ったのは、これは歳を重ねていくシミュレーションにぴったりの映画だということ。インドのジャイプールで撮影された映像からは街の雰囲気もよく伝わってくるから、行ったことのない場所について知る楽しみもあります。

インドは若い頃に行くべきだと思っていたけれど、歳をとってからでもよさそう! ジャイプールが舞台でもインド映画ではないから、いきなり歌って踊りだす場面はなし(笑)。
リタイアした人たちが主人公だし、ほのぼのとした後味が残る作品だから、母親を誘って観るのにもぴったりだと思います。

『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』
インドの長期滞在型リゾートホテルで余生を過ごすため、イギリスからやってきた7人。けれども到着したホテルは、パンフレットとは大違いのオンボロ状態で……。『恋におちたシェイクスピア』の監督のもとに、ジュデ ィ・デンチらイギリスの名優が集結した群像劇。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2013年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。